2022.05.12 【自動車用部品技術特集】車載用にも幅広いラインアップそろえるKOAの電流検出用抵抗器
[写真1]UR73Vシリーズ
自動車は「ADAS:先進運転支援システム」技術の進化により、「ぶつからない車」が実現されようとしており、完全自動運転の実現を見据えて開発が進んでいる。一方、排出ガス規制が強化される中でさまざまな低排出ガス技術が開発され、クリーンで低燃費な自動車が実現されており、そこに電子部品の果たす役割も大きい。また各国は温暖化対策を掲げEVの普及を後押し、各自動車メーカもEVシフトが加速していく。
KOAの電流検出用抵抗器は回路に流れる電流を正確に検出することができ、自動車においてもさまざまなところで電流検出に使用されている。例えば「電動ブレーキ」や「車両安定化装置」では適切なブレーキングや走行安定に寄与している。また、「電動パワーステアリング」ではスムーズで確実なハンドリングを可能にしており、ヘッドライトシステムではオートレベリング機能やオートフロントライトシステム(AFS)によって車の進行方向の視認性向上に貢献している。最近は、ヘッドライトのLED化が進んでおり、ここでも電流検出抵抗器はLEDの輝度を一定に保つために流れる電流の安定化に寄与している。さらに、従来エンジンで駆動していたウォーターポンプやエアコンコンプレッサー等は電動化によって、必要な時に必要な出力が得られるよう動作させることができ、燃費の向上に効果がある。
KOAの電流検出用抵抗器はさまざまな用途向けに豊富なラインアップをそろえている。面実装型の電流検出用抵抗器には、低電流の電流検出で使用される厚膜タイプと比較的大電流検出に適し、許容差、温度特性などが高精度な金属板タイプのシャント抵抗がある。厚膜タイプには、12mΩ~100mΩの低抵抗値範囲で抵抗温度係数±75×10-6/Kの高精度を実現した UR73Vシリーズ(写真1)を有する。高い定格電力と耐ヒートサイクル性に優れる長辺電極構造の製品では、0.75~3.0Wのラインアップを有するWK73シリーズ、さらに高精度高電力、抵抗温度係数±75×10-6 /K~を実現したWU73シリーズ(写真2)がある。
一方、金属板タイプには、寄生インダクタンスを抑えて、波形歪が少なく精度の高い電流波形検出が可能なTLRシリーズ(写真3)がある。2022年3月には小型3216mmサイズの低抵抗領域0.5mΩ~4mΩにおいて定格電力3W対応を実現した。KOA独自の材料・構造により、小型3216mmサイズかつ低抵抗領域にもかかわらず優れた抵抗温度係数±50~±75×10-6/Kを達成しており、高電力、高精度かつ信頼性の高い電流検出が可能である。また、樹脂封止構造で金属端子の応力緩和電極構造により高い耐ヒートサイクル性を有するSLシリーズ(写真4)がある。さらに金属板チップジャンパーとしてEV市場の拡大に伴い回路基板内パワートレインの大電流、低抵抗、高熱容量化に対応したTLRZシリーズを1005mm~3216mmの豊富なサイズラインアップでそろえ最大50Aの定格電流を実現している。同じく樹脂封止構造で高いヒートサイクル性を有するジャンパーとしてSLZもラインアップしている。
電流を高精度で検出するには、アンプ回路のゲイン設定用抵抗器の精度も重要である。RN73Hシリーズ(写真5)は使用温度 最高155℃を実現した高精度の薄膜チップ抵抗器で、自動車に搭載されるさまざまなセンシング回路で求められる高精度、高安定を実現する。主な仕様は、定格電力0.063W~0.25W、抵抗値範囲10Ω~1.5MΩ、抵抗値許容差最小±0.05%、抵抗温度係数最小±5×10-6/Kの高精度を実現している。
また、厚膜抵抗体を用いたチップ抵抗器では従来困難とされていた抵抗値許容差±0.1%、抵抗温度係数±25×10-6/Kの高信頼性厚膜チップ抵抗器(RS73)(写真6)をリリースしている。RS73は薄膜抵抗並みの長期安定性にも優れた高信頼性品であり、同時に硫化対策品もラインアップしている。新たに1Eサイズを追加して、1005mm~3216mmのサイズ、10~10MΩの幅広い抵抗値範囲を実現している。
さらに、ペア抵抗の相対精度が要求される回路には、薄膜抵抗ネットワークシリーズKPC(写真7)が適している。また、BMS、インバーター等における電圧監視用途として高耐圧薄膜抵抗ネットワークHVDを提供している。1000Vまでの電圧検出が可能であり、EVやHEV等の高精度の高電圧分圧回路に好適である。
機能安全の観点からECU電源の安定は不可欠だが、供給電源電圧を監視するため、高精度の電圧分圧器が必要であり、薄膜抵抗が使用されている。
KOAは高精度で耐熱性に優れる温度センサーを提供しており、エンジン制御や排出ガスの後処理で重要な役割を果たしている。
SDT73V(写真8)は最高使用温度155℃を実現したチップ形白金薄膜温度センサー。カスタムの薄膜温度センサーも提供しており、パワー半導体の温度上昇をモニタする用途に利用されている。600℃の自己発熱耐えられるSDT310VASPシリーズ(写真9)は、燃料噴射装置に利用されている。
自動車のECUにはさまざまな電子部品が搭載されているが、静電気放電などECU外部から印加されるサージやパルスに対する対策が必要とされている。特に、静電気が入り込むECUのインタフェース部には耐サージ性の高い抵抗器が使用される。
KOAは、サージやパルス負荷に対する耐性を高めたSG73シリーズを推奨する。SG73シリーズには、ESD限界電圧を保証する耐サージチップ抵抗器SG73Sシリーズ、またワンパルス限界電力を保証する耐パルスチップ抵抗器SG73Pシリーズがあり、それぞれの負荷条件に応じて選定が可能である。
さらに、抵抗値許容差±0.25%、抵抗温度係数±50×10-6/Kを実現したSG73Gシリーズ(写真10)もラインアップ。SG73S/SG73P/SG73Gは同じサイズの汎用チップ抵抗器に比べて、ワンランク高い定格電力0.125W~0.5W(1005mm~3225mm)を保証しており、機器の小型化にも貢献する。
また、高い定格電力と耐ヒートサイクル性が要求される場合には長辺電極タイプのWK73シリーズ(写真11)を推奨する。WK73シリーズは0.33~3W(0510mm~3163mm)までの豊富なラインアップを実現しており、回路基板への高密度実装化にも貢献している。またWG73はパルス耐性に優れると同時に高い定格電力1W~2W(1632mm~3264mm)を実現している。
機電一体化などによる熱環境の厳しい車載ユニットでは優れた耐熱性が求められる。最高使用温度175℃、-55℃/+175℃のヒートサイクル試験を1000サイクル保証した高耐熱かつ耐ヒートサイクル性に優れたHSG73P-ATシリーズを新たにラインアップに追加した。過酷な温度変化が繰り返される環境において機器の信頼性向上に貢献する。
チップバリスタNV73DL(写真12)はインタフェースから入り込むESDノイズやモータなどから発生する誘導サージに対して有効である。一般タイプよりもエネルギー耐量・サージ耐量が大幅に強化され、3216サイズの22V品でエネルギー耐量1[J](同社一般品の約5倍)を実現している。
〈KOA(株)〉