2022.08.03 次世代半導体「酸化ガリウム」パワーデバイスの開発競争が活発

NCTのクリーンルーム。複数枚の4インチエピウエハーを製造する装置など量産に向けた態勢づくりを急ぐ

FLOSFIAの酸化ガリウムSBDを搭載したDC/DC降圧コンバーター(右)FLOSFIAの酸化ガリウムSBDを搭載したDC/DC降圧コンバーター(右)

 酸化ガリウムを使った次世代パワー半導体の開発競争が活発化している。

 材料物性は高耐圧性や低損失性の点でSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を超える。市場規模は2030年までにGaNを上回るとも予想されている。

 各社は一定口径のウエハーの安定的な生成に成功し、酸化ガリウムを使ったパワーデバイスの自社開発に力を入れる。

 タムラ製作所の研究開発部門を母体とするノベルクリスタルテクノロジー(NCT、埼玉県狭山市)のベータ型酸化ガリウムは結晶の成長速度と加工の容易さが強み。

 電流を制御するショットキーバリアダイオード(SBD)を23年に、トランジスターは25年の販売開始を目指す。
京都大学発スタートアップのFLOSFIA(フロスフィア、京都市西京区)が採用するのはアルファ型(コランダム型)の酸化ガリウムだ。

 DC/DC降圧コンバーターにアルファ型酸化ガリウムを用いたSBDを搭載して展示会で発表。年内にもSBDの一部量産を開始する予定だ。

 東北大学発のベンチャー企業であるC&A(仙台市青葉区)はNCTと同じベータ型酸化ガリウムで低コスト化を追及する。

 貴金属のるつぼを使用せずに結晶育成できる手法を開発した。高価なイリジウムを使わないため、製造コストを大幅に下げられるという。

 当面のビジネスモデルはウエハー供給に絞るが、2年以内に2インチウエハーを発売したい考えだ。

 22年のパワー半導体世界市場は2兆3386億円で前年比11.8%増加(富士経済調べ)。このうちSiCや酸化ガリウムなど次世代半導体は5%程度だが、30年には13倍超に拡大し、1兆円を超える見込みだ。

(4日の電波新聞・電波デジタルで詳報します)