2023.02.24 半導体企業を学生が見学 福岡県が人材確保と育成狙いツアー開催
紹介動画を視聴する学生
【福岡】福岡県は、理工系大学生や高専生を対象に県内の半導体関連企業を見学する「プロモーションツアー」を開催し、20日に第1回を行った。国内外の半導体企業が九州に進出する中、関連企業と学生の交流を促し、人材確保と育成を図る狙い。ツアーは初の試みで3月15日までに全4回を予定している。
20日のツアーは、三菱電機パワーデバイス製作所(福岡市西区)、日本ファインテック(福岡県宮若市)、上野精機(同県水巻町)の3社を見学。春休みを利用して九州工業大学、九州大学、有明工業高等専門学校から5人の学生が参加した。
三菱電機パワーデバイス製作所では、同製作所が出荷するパワー半導体の用途や製造工程を動画などで紹介し、製品サンプルが並ぶショールームやオフィスも見学した。学生からは半導体産業の将来性や有給取得率など労働環境に関する内容まで幅広い質問が寄せられた。
参加した九工大工学部宇宙システム工学科2年の宮里健太郎さんは「(半導体の用途が)思った以上に幅があってびっくりした」。宇宙システム分野では衛星の消費電力を抑えることが重要なため、省電力化につながるSiCパワー半導体に特に興味を持ったという。就職を決める材料になることを期待し、3、4回目のツアーにも参加するとしている。
福岡県は半導体やデジタル産業の振興を目的に「福岡県半導体・デジタル産業振興会議」を昨年設立。半導体人材の確保に関心がある会員企業にツアー開催の協力を求めた。
学生の採用状況について同製作所総務部・福岡総務課長の安武宏信氏は「非常に厳しい」と強調。「企業ブランドだけでは就職につながらない」と語った。国際競争から脱落した「日の丸半導体」のイメージから、就職先として不安視する保護者もいるという。
九州では「台湾積体電路製造(TSMC)」の熊本工場新設など、関連企業による開発競争は激しさを増すとみており、「自動化を進める一方で、人の採用も続ける必要がある」とも話した。