2023.06.16 【育成のとびら】〈4〉2~4年目社員がみる人間関係とは?

3年目までの「不安」、4年目「離職意向」へ

上司との関係性が鍵

 5月8日に新型コロナウイルス感染症は日本の感染症法における「5類感染症」へ移行した。ライボ(東京都渋谷区)が757人の社会人男女に行った調査によると、「5類移行後の出社」について約半数が「増える」と回答しており、働き方に対する意識も変わりつつあることが感じとれる。

 2020年から急速に広まった新しい生活様式。テレワークを推進する企業が多くを占めオフィスでの働き方もコロナ前から大きく変わった。この時期に入社した新入社員の中には、5類移行後のオフィス回帰で急増してきた職場の対面コミュニケーションに戸惑いを覚える人もいるだろう。今回はそんな「若手社員と職場の人間関係」について取り上げる。

 ラーニングエージェンシーは22年7月に2~4年目の若手社員900人を対象に「働くことの価値観」について意識調査を行った。

各年次で異なる

 普段は若手とひとくくりにされがちな彼らが、実は各年次で異なる価値観や不安を抱えていること、離職予防の鍵はその価値観や不安の違いの理解にあることは前回述べた。そして、今回は「離職意向を喚起する不安」についての分析結果を紹介したい。

 まず当社は調査対象の2~4年目の若手社員に「現在どのようなことに不安を感じているか」と質問した。すると、4割が「今後のキャリアが描けず、この会社で働き続けることに不安を感じている」と回答した。

 特に人間関係が不安を駆り立てる要因にもなっており、後輩との関係に比べ上司との関係に不安を感じている社員が全年代で多いことが分かった。ただ、後輩との関係性に悩む声は2年目が最も高く、3年、4年目へと進むにつれて改善傾向にあった(図1)。

 一方、上司との関係性については、より深刻な傾向が明らかになった。上司との関係性に苦労した経験を持つ社員に対し「その場面をどう捉えたか」と質問したところ、年次を重ねると不安から離職に意識が向いていく回答となったのである。

 ここで注目すべきは2、3年目社員と、4年目社員の回答の違いだろう。上司との関係性の苦労について、2、3年目社員の多くが「不安」にとどまる一方で、4年目社員は「不満」「離職」が最多の回答となっている(図2)。

4年目、一層注意

 経験を積み、職場の人間関係も理解が深まった4年目社員は、若手の中でも広い視野を持った存在になっているはずだ。だからこそ上司は彼らへの指示やフィードバックについて一層の注意を払う必要があるだろう。

 この調査から、2~4年目の社員の働く意識は職場の人間関係が大きく左右することが分かった。中でも、年次の高まりに合わせて「上司との関係性」が離職意向の喚起に大きな影響力を持つことが判明した。

 今の若手社員の多くは、コロナ禍でファーストキャリアを迎え、今回の5類移行による出社頻度の増加の受け止め方もそれまでの世代と大きく異なることは忘れてはならない。

 先が見えにくい変化の中でキャリアの展望がイメージしにくくなっている彼らに対し、企業や上司は彼らのキャリア志向を理解し、コミュニケーションやフィードバックの中で、成りたい姿へ成長していくための道筋を示してあげることが重要だ。(つづく)

 〈執筆構成=ラーニングエージェンシー〉

 【次回は6月第5週に掲載予定】