2023.07.14 【電子部品技術総合特集】ハイテクフォーカス ニチコン

【写真1】 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー「GYFシリーズ」

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーの最新技術動向

■はじめに

 近年、自動車・車載関連分野においては「CASE」をキーワードとして、カーエレクトロニクス技術が大きく進化・発展してきている。具体的にはカーボンニュートラルを目指して、パワートレインのxEV化、EPS(電動パワーステアリング)、EOP(電動オイルポンプ)、EWP(電動ウオーターポンプ)といった各種電装化ユニットの搭載による省燃費化技術の普及、また、ADAS/自動運転技術のさらなる高度化やコネクテッドといった自動車の高機能化に向けた動きが加速している。

 xEV化、電動化、高機能化の進展によって、自動車1台当たりの電子部品搭載点数は増加傾向にあるため、今後、自動車生産台数以上の伸び率で電子部品需要が拡大すると見込まれる。

 車載用途のアルミ電解コンデンサーには小型・大容量化、高温度・長寿命化、低ESR化、高リプル電流化といった性能向上に対する強いニーズがある。このようなニーズは車載用途以外の5G基地局など情報通信機器においても共通しており、さまざまな機器におけるトレンドと捉えている。

 当社ではこれら成長市場に対する技術開発を重点的に進めている。特に需要が拡大している導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーの最新技術動向を紹介する。

■導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーのラインアップ拡充

 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーには、導電性高分子と電解液の2種類の電解質を採用している。

 電解液の約1万倍の電導度を有する導電性高分子(PEDOT/PSSが一般的に用いられる)を併用することで、電解液のみのアルミ電解コンデンサーに比べて製品ESR(等価直列抵抗=Equivalent Series Resistance)を大幅に低減。リプル電流負荷によるワット損失(W=2IR W‥発熱 I‥リプル電流 R‥製品抵抗〈ESR〉)が小さくなり、製品自己発熱を低下させて長寿命化が期待できる、あるいは、許容リプル電流アップによってより高付加のアプリケーションに対応可能になる。

 このように導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーは、従来のアルミ電解コンデンサーと比べて大幅な低ESR化、高リプル電流化、長寿命化といった点で優位性がある。

 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーに採用する電解液は、誘電体(アルミ酸化皮膜)の修復性、低蒸散性といった一般的な条件のほか、高温環境下における導電性高分子との反応性などをポイントに開発している。この専用電解液の特性によって、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーに比べて漏れ電流が低く、高温環境下で長時間使用しても電気的性能を維持できる高信頼性能を実現している。

 当社の導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサーは、125度4000時間保証の標準品GYAシリーズと高容量化を図ったGYEシリーズをベースに、長寿命化ニーズに対して105度1万時間保証のGYBシリーズ、高温度化ニーズには135度4000時間保証のGYCシリーズ、150度1000時間保証のGYDシリーズをラインアップしている。

 単器での大容量化ニーズに応えるφ10×12.5Lサイズにも新たに耐振動構造品を追加し、車載用途を中心に要望の強い耐振性能の強化を図った。各シリーズのラインアップは【表1】の通り。

■125度4000時間高容量品「GYFシリーズ」

 125度4000時間保証のGYAシリーズから1ランク高容量化したGYEシリーズを2021年に市場投入しているが、今般、さらに高容量化を図ったGYFシリーズ【写真1】を上市した。

 GYFシリーズは、高容量電極箔と薄手セパレーターの採用によって高容量化を実現。信頼性はGYAシリーズと同等の125度4000時間の耐久性と85度85%RH・2000時間の耐湿性能を保証する。

 125度4000時間保証品の3シリーズの定格静電容量・定格リプル電流の比較を【表2】に示す。GYFシリーズは同一サイズで高容量化を達成しつつ定格許容リプル電流値はGYAシリーズと比較して最大1.44倍であることから、より小型、コンパクトな回路設計に貢献する。

〈筆者=ニチコン〉