2023.07.14 【育成のとびら】〈6〉成長の不安を取り除く策とは?

3年目の孤立が離職へつながる

不安の中身、具体化の支援を

 入社年次に応じて若手の意識が変化していくことを考えている上司はどれだけいるだろうか--。

 本連載では当社ラーニングエージェンシーが2022年7月に全国1200人の入社1~4年目社員を対象に行ったアンケート調査の分析結果を基に、若手の育成と定着について考察し、毎回、企業や上司に向け若手と接するヒントを示してきている。

 前回は「2~4年目社員の成長への不安」をテーマに、新人から一人前の社会人へと進む過程で、周囲の期待と自身の成長度との間のギャップをどう感じているのか、2~4年目社員の共通傾向とその対策を取り上げた。

 今回は「成長への不安」の中で、複数の項目でほかの年次と回答率に大きく違いが出た「3年目社員」に焦点を当てる。多くの企業で新人と一人前の境目とされることも多い3年目社員。企業は彼らとどう向き合うべきなのだろうか。

 その特徴が大きく表れたのは「不安に感じる場面」の質問だ。「自分の成長に不安」「自分の知識・スキルに不安」の二つにおいて、3年目社員の回答率だけがほかの年次に比べ低く、横棒グラフで並べると〝く〟の字のようになった(図1)。

 これだけでは単なる偶然といえるかもしれない。だが、この傾向はほかの項目でも見られ、仕事の「難易度」「量」など、関連する質問全項目の半数以上で3年目だけが2・4年目に比べ「不安」と回答する人が少なかった。

 一見、この〝く〟の字傾向は「3年目は他年次に比べ不安になりにくい」「3年目は安定している」とも解釈できるが、実はそうではない。

逆〝く〟の字傾向

 前回、若手が不安を感じる場面で「役割が変化しない」「期待を聞いたことがない」という回答が多いことについて「企業は重く受け止めるべき」と指摘した。そして、この場面において3年目の回答率が最も高いという「逆〝く〟の字傾向」が明らかになった(図2)。

 この二つの相反する傾向から、3年目社員の多くが「役割が変化しない」「期待を聞いたことがない」ことで不安になった経験を持っているが、肝心の「不安の中身」の具体的な解決策が見いだせていないという状況が見てとれる。

 「3年目なのに役割が新人の時と変わらない」「上司が自分にどうなってほしいのか分からない」という不安を持った彼らは、「でも、どうしたらこの不安が解消するのか分からない」と思っているのが本音かもしれない。

 本来、不安を克服することで成長につながっていく。「期待と現実のギャップ」は、不足するスキルの自己認識を促し、研さんの方向性を決める要素となる。しかし、不安の中身が具体化されないとき、不安がそのまま成長の停滞につながり、結果的に社員のモチベーションを奪うリスクになる。その先にあるのは「離職」の2文字だ。

不安解消へ寄り添う

 「独り立ち」と「孤立」は似ているようで全く違う。企業は孤立しがちな3年目社員に対し、期待と現実の適切なギャップを認識できる環境をつくり、不安の解消に向け寄り添う姿勢をとる必要があると言えるだろう。

 次回は「若手の育成・定着」シリーズ最終回となり、若手の定着に向けもう一段踏み込んで考えていく。(つづく)

 〈執筆構成=ラーニングエージェンシー〉

 【次回は7月第5週に掲載予定】