2023.07.20 【ケーブル技術ショー特集】日本ケーブルラボ オールIP実現めざす
5つの重点分野を定義
技術イノベーション発展へ
CATV業界を取り巻く情報通信技術が著しい進展を見せる中、2030年のCATV業界の「オールIP化」の実現に向け、日本ケーブルラボ(JLabs、ラボ)はケーブル事業を技術イノベーションによって発展させるため、五つの領域を重点分野と定義してラボ活動を推進してきた。
CATV業界の技術面を全面的にバックアップする役割を担うラボは、CATVのIP配信技術の指針となる「IP配信システム構築ガイドライン」を策定。さらに、新たなケーブル事業を支える技術領域として「オールIP」を中核に、インフラ技術軸として「有線」「無線」、サービス技術軸として「サービス品質」「新サービス」という五つの重点分野への取り組みを進めている。
オールIPでは、映像サービスのIPによる放送・配信のみならず、テレビサービスの高度化、運用高度化、サービス間連携による付加価値創出などのIP技術に取り組む。
有線では、1/5/10ギガbpsなどのFTTH(光化)サービス速度にとどまらず、運用性、保守性や宅内も含めた施工の容易性を視野に入れる。無線では、加入者宅内での最後のアクセスとしてのWi-Fi(6/6E、7)環境の整備や、光ファイバーの代替手段としてローカル5Gなどを活用する。
サービス品質では、品質を維持・監視し、常に適切に管理する基盤技術として、高可用性、高品質、高効率、低コスト(運用、設備)がキーポイントとなる。放送、通信、サーバー、ネットワークの高度運用、自動化、品質管理、セキュリティー対応などに取り組む。新サービスではB2C、B2B/G、地域DXで多種・多様化する魅力的なサービスの提供などを技術テーマに据え、新サービスに対応したインフラ面などを検討する。
NHKの「NHKプラス」やTVerの見逃し配信の本格化を機に、放送のIP化が急速に浸透。CATV事業者にとっては設備のコストダウンやOTTと連携したサービスを展開しやすくなる。
一方で、現在のテレビ放送の周波数多重信号を配信するRF方式の設備やSTB(セット・トップ・ボックス)などをIP化するコストが課題になっている。今後のIP連携による高度なサービスの迅速な提供やRF市場縮小に伴うSTB価格の高騰に備え、放送のIP化を推進する。
また、ケーブルテレビネットワークの構築におけるローカル5G活用技術に関する調査研究、IPテレビサービスに向けた宅内ワイヤレス、Wi-Fi6E評価、可搬型ローカル5G基地局の応用検討を目的とした干渉・共有条件なども検討している。
今年のケーブル技術ショーではラボが取り組む次世代ケーブル技術のうち、「オールIP実現に向けての取り組み」「ローカル5GによるIP映像伝送技術」「可搬型ローカル5Gの応用技術」を展示する。
オールIP実現に向けての取り組みでは、ラボで制定したIP放送運用仕様に準拠したIP放送サーバーとIP-STBによる異ベンダー機種間の相互接続デモを実施し、既にIP放送サービスがレディ状態であることを披露する。
ローカル5GによるIP映像伝送技術では、愛媛CATV管内の実フィールドで実施したローカル5GによるIP多チャンネル映像伝送実験と開発した電波伝搬シミュレーターを紹介。可搬型ローカル5Gの応用技術では、可搬型ローカル5Gによるアップリンク偏重フォーマットの活用の一例として、スマート工場やライブ多点中継などで必要な高精細映像のアップロード伝送を訴求する。