2023.07.27 【半導体/エレクトロニクス商社特集】エイブリック リチウム電池保護などに注力 高付加価値品に転換

石合会長(右)と田中社長

 エイブリックは、ミネベアミツミグループの中核企業としてアナログ半導体事業を展開している。停滞感が続く市況や市場在庫の増加により、経済環境は厳しいものの、経営方針はぶれることなく推進する。

 グループでのアナログ半導体事業売り上げ1000億円の目標を、2024年度(25年3月期)中に達成することを目指す。

 22年度(23年3月期)は売上高、営業利益とも過去最高を達成。同社が設立された18年度比で売上高、営業利益とも約100億円の伸びとなった。今期は昨年後半から続く需要の低迷により、厳しい出だしとなった。「中国市場の停滞に加え、半導体不足が続いた数年で一斉に発注量を増やしたことによる市場在庫の増加により、受注は伸び悩んでいる。23年のアナログ半導体は市場予測によれば約5%強のマイナス成長となる見通し」(石合信正取締役会長)。

 短期的には厳しい状況が続くが、中長期的には成長は続くと見込む。「24年には回復し、市場全体で2桁成長の予想」(石合会長)とし、これまで取り組んできた成長戦略を継続する。

 特に力を入れるのが注力製品群である①リチウム電池保護②車載電源③医療・高圧④磁気センサー⑤クリーンブースト--の拡販。新製品を積極的に投入し、付加価値の高い製品への転換を加速させる。

 車載電源については顧客との密着共創に取り組み、着実に成果を上げている。

 医療・高圧は、超音波診断装置向けなどで実績を伸ばしている。16年に日立製作所から事業譲受した医療機器用IC事業をバックボーンとし、高い技術力が強み。海外市場での評価も高く、今後さらなる成長につなげていく。

 同社は今年6月、経営体制を刷新。18年の設立以来、エイブリックの成長をけん引してきた石合会長から田中誠司代表取締役社長執行役員がバトンを引き継いだ。

 田中社長は「今まで取り組んできた経営方針やビジョンは全く変わらない。持続的成長を実現するため、企画・開発力・高付加価値商品の強化を加速させる」と話す。

 今後さらなる成長を遂げるには、グローバル市場でのビジネス拡大が必要。

 「欧米でのブランド力を高めるとともに、競合メーカーに負けない高付加価値商品を提案していく」(田中社長)。

 ミネベアミツミグループ製品のクロスセルを展開し、グループの強みも生かしていく。