2020.02.21 【ICT展望2020】富士通コミュニケーションサービス・山本享史社長
山本社長
カスタマサクセス支援
―コンタクトセンターを取り巻く環境が変わってきました。
山本社長 多くの企業では顧客に対し製品やサービスを販売してきたが、最近はシェアリングやサブスクリプションといった新たなサービス形態が増え、当社のようなコンタクトセンターによる支援の役割も変わりつつある。従来は販売した商品の満足度を高める施策を打ってきたが、今はいかに顧客と長く付き合い、つなぎ止めていくかが重要で、当社への要求も商品販売後のサポートだけでなく、商品を使いこなすための支援を求める声が多くなっている。
―数年来、カスタマエクスペリエンス(CX、顧客体験)の向上に取り組みました。
山本社長 商品やメーカーに対するロイヤルティ(忠誠心)を高めることがマーケティングで重要になり、様々な角度からCXを向上させる取り組みを進めてきた。特に、最近は多様化する顧客ごとの対応も求められる。
顧客の属性によってもロイヤルティを高める手法は異なるため、ロイヤルカスタマを増やす独自指標「HC-X(ヒューマン・コンタクト・エクスペリエンス)」を考案し、人の介在によるCXへの貢献度を見えるようにした。これにより、「頭の満足」と「心の満足」の両面を高めるような支援を行っている。
―CXの捉え方も変わってきているということでしょうか。
山本社長 今後、多様化する顧客に対し最適なサービスを提供する「カスタマサクセス(顧客の成功体験づくり)」が重要になる。若者から高齢者まで様々な顧客が存在する中、それぞれの属性によって求めるサービスやサポートは異なるため、個人に適したサポートをしたいと考えている。
―カスタマサクセスを実現するために取り組んでいることは。
山本社長 FAQやチャットボットといったICTと人を最適に組み合わせることが重要で、エフォートレス(努力なし)のカスタマサクセスがポイントだ。若者は事前にFAQで調べるため、最も満足度を高めるにはFAQで解決することだが、年配者はセンターに問い合わせて直接確認した方が満足度が高まる。
こうしたICTと人との最適な対応ができるセンター運用が求められており、最近はよりCXを高めるセンター運用への引き合いが多い。例えば、サイボウズとはコンタクトセンターだけでなく、サービス導入後の活用支援なども行っている。
―人財育成も重要になりますね。
山本社長 センター運用が高度化し、多様化する中で、人財育成は重要な課題だ。当社は昨年、人財育成のための新組織「CSLユニバーシティ」を設立した。センター運用に関する知識習得だけでなく、幅広い知識の習得に向けたカリキュラムを用意し、展開を始めている。
―20年の施策は。
山本社長 19年12月5日に創立25周年を迎えた。20年は多様化する企業の顧客対応力を高める支援とともに、新規顧客の拡大にも努めたい。10日には本社のある横浜・みなとみらい地区に、13カ所目となる新センター「横浜みなとみらいソリューションセンター・アネックス」を開設した。BPOサービスの拡大に対応していく。
16年度から進めているサテライトオフィスも順調だ。今後もサテライトの拡張や新規開設に取り組むほか、大学などと連携して学生のインターンシップなどにも取り組みたいと考えている。