2020.03.03 【ICT展望2020】富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ・土肥啓介社長

土肥社長

確実にDXを支援

 ―足元までのビジネスはいかがですか。

 土肥社長 SI(システム構築)とソリューションの2事業を柱に取り組む中、SI関連は富士通グループで進めている官公庁や通信関連の大型案件などがピークアウトし前年度よりも厳しい状況ではあるが、産業系などの案件は順調に伸びており、全体では減少をカバーできるところまできている。独自に体系化したソリューション群「パワード・ソリューション」を使った案件も増えている。

 ―各社がデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)に取り組んでいます。

 土肥社長 当社自体もDX時代への対応が課題で、19年にパワード・ソリューションを再編し、DX時代に対応できる体系に仕立てた。システムエンジニア(SE)企業として、お客さまへの価値を最大化できるシステム開発の支援が重要だと考えている。新ソリューションによって顧客のDX支援を進めるとともに、社内のDXにも取り組んで効率化と生産性を高めていきたい。

 ―新パワード・ソリューションの特徴は。

 土肥社長 情報システム分野に強いSE会社として、お客さまの現場が抱える課題からやりたいことを導き出し、DX技術で解決することに主眼を置いた。

 新体系は、お客さまのやりたいことを引き出し、スピード感をもって支援する「DXコ・クリエーション」、やりたいことを実行するためにデータから価値を生み出す「データマネジメント」、お客さまの顧客との接点を強化する「カスタマ・エクスペリエンス」、DX実現の基盤となる「DXプラットフォーム」、全てのシステムで必須になり当社が得意としている「セキュリティ」の五つで展開していく。

 ―顧客がやりたいことを引き出すにはコンサルティングの要素も必要になりますね。

 土肥社長 多くの企業がよりスピード感をもってDXへの取り組みを始めているため、DXコ・クリエーションではアジャイルの手法を取り入れるとともに、TOC(制約条件の理論)を採用し、お客さまの本当にやりたいことを短時間で的確に導き出せるようにした。5人体制で支援を始め、既に1社で成果を上げている。この取り組みをさらに拡大していきたい。

 ―技術者不足も課題になっています。

 土肥社長 各社とも限られた人財で新しいことに取り組まなければならない状況は変わらない。その意味で当社もこの一年は社内のDX化に着手した。社内に「断捨離ワーキンググループ」を設置して無駄の排除の議論を進めているほか、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用を始め、成果を出しつつある。社内の改革にもTOCを使い全体最適に取り組み始めた。

 ―20年の施策は。

 土肥社長 DXの流れが加速すると見られることから、長年SIで培ってきた信頼と技術により、スピード感をもって応えていく。新パワード・ソリューションを軸に確実にDXを支援するとともに、社内のDXを加速させ、効率化を図っていく年にしたい。

 ―新技術の習得も必要ですね。

 土肥社長 DX時代には様々な新しい技術が必要だ。当社はもともとセキュリティやオープンソースソフトウエアなど新技術に取り組む文化が醸成されている。アジャイルの領域ではマイクロサービス化が重要なため、コンテナや仮想化などの技術の取り組みが必要になる。実際のSI案件などで採用しながら進めていきたいと考えている。