2020.03.05 情報サービス各社 就活にWeb利用検証 新型コロナ感染対策を機に

「オンライン就活」を運営する担当者(東京都千代田区のガイアックス)

 21年春卒業予定の大学生らを対象に1日解禁された会社説明会が、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、軒並み中止に追い込まれている。こうした中、採用活動へのIT活用で先行する情報サービス業界で、説明会にWebを取り入れる動きなどが活発化。就職活動を進める学生と複数企業がオンライン上で双方向にやりとりするイベントも登場した。〝就活のオンライン化〟を加速する機運が高まりそうだ。

 「積極的にリアクションを取りましょう」。2月下旬、情報通信業のガイアックス(東京・千代田)の一室を訪れると、女性がPCを前に話しかけていた。

 就活生がインターネットを利用して複数企業による会社説明会と座談会に参加できる「オンライン就活」の運営担当者で、参加企業と対話するコツを就活生に伝授した。

 地方や海外で暮らす学生は、就活時に多額の費用をかけて都市部の会社説明会などに参加する必要があるほか、就活に割ける時間も限られる。

 同社はそうした問題を解消しようと、オンライン就活を2月に立ち上げた。密度の高い双方向のやりとりを実現するため、原則として1回のイベントに参加する企業は3社に、就活生も15人に抑えた。

 感染症の発生以前に考案した企画だが、中止が相次ぐリアルな合同説明会や企業単独セミナーの代替策として引き合いが増えている。

 オンライン就活事業責任者を務めるソリューション事業本部の管大輔本部長は「就活生を地方に隠れた優良企業や成長企業に結び付け、U・Iターン促進にも貢献したい」と強調。20年末までに300社と1万人の就活生が利用する事業に育てることを狙う。

 24日にオンライン就活を利用する1社が、NECソリューションイノベータだ。感染拡大を踏まえ、3月下旬に全国主要都市で開く説明会の開催方法を検討するなど採用活動を見直す対応に追われているが、約1年半前からWebとリアルを併用してきた実績が緊急時に役立った。

 同社は、無料通信アプリのLINEで申し込めるオンライン就活の有用性に注目。人財企画部の餅木暁之主任は「SNS(交流サイト)を使う、情報感度が高い学生にも接点を広げたかった」と述べた。

 日立システムズも、今月上旬から主要都市で開く予定だったリアルな単独説明会やその後の個人面接をWebに切り替えるほか、リアルなグループ面接の中止も決定。急な軌道修正だったが、16年ごろから採用活動に取り入れたWebの経験が生きたという。

 同社は21年4月入社の新卒学生を2年連続で200人超採用する計画で、その中心がシステムエンジニア。AI(人工知能)やIoTなどのデジタル技術を駆使して事業や経営を変革する機運が高まる方向にあるだけに、Webであってもデジタル変革の推進を担う人材の獲得の手を緩めるわけにはいかない。

 人財戦略部タレントマネジメントグループの平川由理部長代理は「対面でなくても求める人材を獲得できるのか。学生と採用者双方の負荷を軽減する効果も見定めたい」と強調。検証結果を踏まえ、Webの継続利用や活用範囲の拡大について検討したい考えだ。

 就職支援事業を手がけるジェイック(同千代田区)が就活生251人を対象に2月下旬から3月上旬にかけて意識調査を行った結果、Web説明会を体験または予約した学生は約9割に到達。

 同社は「新型コロナウイルスの感染対策を機に、多くの学生に効率良く自社の魅力を伝えられるWeb説明会の導入機運が高まり、有用性が認知される可能性は高い」と分析する。