2023.11.14 政府、生成AIの開発力強化を支援、補正予算案に計上 民間活力生かす

 政府は、文章や画像などを自動作成する「生成AI(人工知能)」の開発力の強化に向けた支援策を2023年度補正予算案に盛り込んだ。民間事業者の活力を生かし、計算資源や学習用データの整備を促す。AIを巡る熾烈な国際競争が繰り広げられる中、見劣りをしない開発環境を整えて日本経済の成長力につなげる狙いだ。

 経済産業省は「成長力の強化や高度化に資する国内投資の促進」を補正予算案の柱の一つに据えた。中でも生成AIの開発力強化に向けた計算資源の整備などには、1856億円を充てる。

 内訳を見ると、産業技術総合研究所が持つAI開発用のスーパーコンピューター「ABCI」の増強で約400億円を計上。民間事業者によるAI向けデータセンターの整備を支援する計画には、約1166億円を振り向ける。2023年度内の公募開始を目指す。

 さらに生成AIの開発力強化に向けては、競争力があり波及効果が大きい基盤モデルの開発を行う企業などを集中支援する計画も、予算案に盛り込んだ。

 一方で総務省は、生成AIの基盤技術の一つ「大規模言語モデル(LLM)」の開発に必要な学習用の言語データの整備・拡充で、100億円を計上した。情報通信研究機構(NICT)が日本語を中心とする言語データを整備し、そのデータを民間事業者に提供して開発を後押しする。

 総務省によると、学習データの整備に関しては、既に24年度予算の概算要求に10億円を計上しており、補正予算で拡充し前倒しする。また、偽・誤情報の拡散など生成AIに起因する多様なリスクに対応するための技術の開発も加速する。

 AIは今後、IT以外の多彩な業界への応用も見込まれているだけに、開発の遅れは日本経済の競争力低下に直結しかねない。そこで政府は、AIに関する政策の方向性を議論する「AI戦略会議」でも、AI開発力の強化を緊急に取り組む課題と位置付けた。

 AIをはじめとする先端技術は国の経済活動を止めないための重要な土台で、他国に依存すると非常時に利用できず国民の暮らしが脅かされかねない。経産省は、経済安全保障の強化や技術ギャップに伴う国富の流出回避という観点からも、AI開発力の強化を支援したい考えだ。