2024.01.10 【電子部品総合特集】臼居賢社長に聞く アルプス物流、今後の戦略

臼居 社長

 電子部品を核とした総合物流サービス企業、アルプス物流の臼居賢社長に電子部品物流市場の展望や同社の戦略を聞いた。

 ―最近の事業動向は。

 臼居社長 電子部品物流部門の貨物量は2023年1月から大きく減少した。23年度の期初段階では下期から既存貨物の荷動きが上向くとみていたが、そうした動きにはならず、我慢の時期が続いている。

 ―分野別の動向は。

 臼居社長 車載は比較的堅調。半導体調達難の解消で自動車生産が上向いていることが寄与している。産機用部品は、設備投資の低迷で納期の後ズレや一部キャンセルなどの動きがあり低調。最も低調なのは民生機器向け部品。パソコン(PC)関連は23年も停滞が続いている。民生需要が回復すれば、それに伴い設備投資も増えるため、産機系の需要も好転するが、その時期がいつになるかが問題。

 ただし、これらの需要は景気が好転すれば回復するが、もう一つ注意が必要なのは業界の構造変動。中国の自動車市場では電気自動車(EV)が成長しているが、EV化でプレーヤーが変化し、非中華系の外資系顧客が苦戦している。また、最近は製造業の中国からのシフトが進み、貨物がさまざまな地域に拡散する傾向となっている。

 ―24年の需要見通しは。

 臼居社長 世界の半導体需要は、24年は23年より増加が見込まれ、スマートフォンやPCも24年4月以降は徐々に回復に向かうとみている。

 ―今後の経営戦略は。

 臼居社長 24年度は「第5次中期経営計画」の最終年度。計画に沿ってしっかり取り組む。中計では物量キャパシティー向上への投資に積極的に取り組んでいる。22年後半以降はさまざまな国で投資を行い、24年度に向けてキャパが拡大するため、これらに合わせて売り上げ拡大を図る。

 ―具体的な投資内容は。

 臼居社長 23年度は、国内では、埼玉県の加須で倉庫を拡張したほか、神奈川、秋田、新潟などでキャパを向上した。さらに24年の1月から6月にかけ、愛知県の小牧、大阪府の茨木で新倉庫を稼働させる。成田でも6月までに倉庫を拡張する。これらによりトータル保管能力は22年度期末比で24年6月には10%以上増加する見通し。海外は、23年度は韓国の光州倉庫を増築したほか、マレーシア、インド、メキシコなどでキャパを向上した。24年も、ドイツ、タイ、中国などで投資を検討している。

 設備投資は24年度も積極投資を計画する。最近は、車両入れ替えや環境対応、自動化設備などの投資も増えている。24年度も人不足対応のための自動化でさまざまなチャレンジを行う。電子部品専用設備の自社開発にも力を入れており、コンデンサーのラベラーの効率化を追求した設備や、画像認識技術を活用した入出庫検品システムを開発し、特許も取得した。

 ―インド市場への展開は。

 臼居社長 現在、ニューデリーエリアとグジャラートエリアに拠点があるが、さらに広げる必要がある。インドでは一般的に電子部品輸送の品質があまり良くないと指摘されるが、当社は自社のトラックを自社のドライバーが運送する方式により輸送品質向上に努めている。このほか、インドネシア進出の検討なども進めている。

自動化で人不足に対応

 ―「物流2024年問題」への対応は。

 臼居社長 ドライバーの残業時間を短縮するため、効率の良いトラック輸送ルート設計に取り組み、日本国内の設計変更を完了した。一方で、残業時間減がドライバーの手取り収入低下につながらないよう処遇改善に努める方針だが、カバーしきれない分は物流価格への一部転嫁が必要になる。