2024.01.10 【電子部品総合特集】部品メーカートップに聞く 2024年の経営戦略 双信電機 杉山雅彦社長
杉山 社長
親会社と協業で商品領域の拡充
2024年の市場は、ノイズフィルターは半導体製造装置が調整局面で、延伸の話などもあり、少なくとも年前半は調整が続くとみている。だが、25年に向けては各顧客が半導体製造装置や工作機械、ロボットなどの生産を増やす計画を立てているため、24年後半からは市場の回復が予想される。
今はうまくブレーキとアクセルを調整しながら、25年の回復に結び付けていけるようにしたい。
積層誘電体フィルターは、インフラ需要の鈍化に関してはいずれ回復すると思う。一方で、当社はこれまで先端分野向けの高性能品にフォーカスして事業を展開してきたが、想定以上に市場での次世代技術への置き換えが速く進んでいるため、来期は踊り場的な動きが続く可能性もあると考えている。
当社は親会社の台湾ウォルシン社と協業し、さまざまなことを進めてきた。来期に向けては高性能品だけでなく、中性能のボリュームゾーン領域を狙って商品ラインアップを広げていく。このため、ウォルシンとの相互の製品提供や、ウォルシンの工場を活用してわれわれの領域を広げるなどの取り組みを推進する。
このほか、両社が共通して活用できる材料の開発も進んでおり、協業の中身が具体的になってきたと感じている。来期以降は、マーケティングや技術などの組織を、より一体で運営できる形にしていく。
22年の社長就任後に、当社の目指すべき目的、存在意義について「ノイズの無い世界を作る」というメッセージを打ち出した。この方針に基づき、具体的に注力する5分野として「モビリティーインフラ」「新エネルギー」「通信インフラ」「高周波の応用」「デジタル技術の活用」を掲げている。
モビリティーインフラでは、EV急速充電器や非接触給電に適したフィルターやコイルの開発や、積層誘電体フィルターを活用した車間通信への展開などに取り組む。新エネルギーは、太陽光発電や風力発電に加え、水素発生器などの分野も視野に入れる。
通信インフラは、5Gや衛星関係などを通信でつなげていく。高周波の応用では、より高い周波数のエネルギーを活用した製品開発を進める。デジタル技術の活用では、製品だけでなく、デジタル空間やデジタルツインなどのソリューションを開発し、大型産業機器分野向けに展開したい。これら5分野の開発を重点的に行う。