2024.01.10 【電子部品総合特集】部品メーカートップに聞く 2024年の経営戦略 日本ケミコン 上山典男社長

上山 社長

ハイブリッドコンデンサー、最先端の新棟が稼働

 2023年は非常に厳しい年だった。特に中華圏の需要が低迷した。分野別では車載は好調だったが、それ以外は総じて低調だった。

 24年の市場展望は重点5市場(車載、産機、新エネルギー、生活家電、ICT)の中で、車載関連は今後も比較的堅調に推移するとみているが、それ以外の分野は不透明で、特に産機関連は顧客の実際の生産以上に、多くの流通在庫が存在している状況。今後は少しずつ受注が上向いていくと考えているが、まだ明確な自信が持てる状態ではない。やはり中国市場が回復してこないと難しい。ここ2、3カ月が底になると考えているが、まだ不透明感がある。

 車載用で需要が増加している導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー(ハイブリッドコンデンサー)は、顧客からの要求に対し生産が追い付かない状況が続いているため、宮城工場(宮城県大崎市)でハイブリッドコンデンサー製造のための新棟建設を進めている。新棟は24年7月ごろの完成、9月ごろからの稼働を予定している。新建屋はスマートファクトリーとして最先端の工場施策を盛り込む。加えて、海外での需要に対応するため、23年から台湾工場でもハイブリッドコンデンサー製造ラインを整備した。宮城工場のフル稼働後の27年には、ハイブリッドコンデンサーの生産能力は現状の約2倍に増強される予定。これを前倒しすべく社内で取り組んでいる。

 EV(電気自動車)のオンボードチャージャー向けのナノ結晶合金コモンモードコイルの増量も進めている。足元ではやや需要が軟化しているが、今後もEV関係を中心に増加が見込まれるため、25年には生産能力を現在の約2倍に増強する。

 スマートファクトリーの一番の柱は、設備稼働率の徹底的な引き上げ。マシンを極力止めないようにする。これは、製造工程の改善だけでなく、営業の受注情報から、社内の納期調整、納期回答、生産、出荷までの流れを極力自動化することがポイントで、これによりボトルネックを解消していく。

 加えて、人手がかかっていた工程間の運搬を、AGⅤ(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)を活用して省人化する。そして最終的な外観選別をカメラによる自動検査とすることで、さらなる省人化を図る。