2024.01.10 【電子部品総合特集】部品メーカートップに聞く 2024年の経営戦略 TDK 齋藤昇社長

齋藤 社長

「クオリティファースト」に注力

 2023年は、スマートフォンやxEVを除く自動車、産業機器などの主要市場がポジティブな流れにならなかった。

 こうした時期は、「自力をつける」ことが重要。市場環境は悪くても自分たちでできることは多い。重視するのは「クオリティ」。製品品質だけでなく、生産性の質、働き方の質、コミュニケーション、社員の健康など広い意味での「クオリティファースト」に注力しており、24年度も継続強化する。

 市場回復期への準備を図りつつ当社自身のクオリティーを高めることで、市場復調時に機会をしっかり捉える。

 今後の市場展望は、車載用部品は23年度上期末までに市場の在庫水準がほぼ適正化したとみており、徐々に回復に向かうと予想する。データセンター向けHDDヘッドについては、今期は生成AIへの投資シフトの影響を受けたが、いずれはデータセンター投資も回復するため、次世代技術に磨きをかけていく。

 センサー応用製品は、MEMSモーションセンサーが中国スマホ市場の鈍化で足踏みしたが、徐々に回復軌道に乗るとみている。次期中計ではセンサー事業の営業利益率を2桁に上昇させたい。センサービジネスではソフトウエア技術を活用したバリューアップも検討していく。その一環で23年に米国のオートマシンラーニング企業を買収した。

 受動部品は、MLCC(積層セラミックコンデンサー)は短期の需要変動はあってもxEVを中心に伸長している。フィルムコンデンサーやノイズ対策部品も含めて、供給体制をしっかりと整えていく。

 エナジー応用製品は、小型電池は業界ナンバーワンポジションを維持していく。小型電池においては、シリコン負極技術を用いた新製品が今期初めて顧客に採用された。

 中型電池は中国CATLとの合弁での生産が立ち上がった。中型電池事業は、ESS(エネルギーストレージシステム)や家庭用蓄電池のほか、Eバイクや産業用蓄電池などに展開し、売り上げを30年には年間4000億~5000億円規模に拡大したい。

 次期中計でも①二次電池②受動部品③センサーを3本柱にしていく戦略に変更はない。戦略成長事業のさらなる成長と課題事業への対処で業績の底上げを目指す。

 グループ全体の使用電力のRE比率50%達成は、24年に前倒しできる見通し。DX活用や生産性改善によりLE(省エネ)も推進する。

 社員のエンゲージメント向上にもしっかり取り組む。