2024.01.16 【半導体/エレクトロニクス商社特集】半導体技術 チップレットなどで「ムーアの先」めざす

OKIと信越はコラボする

レゾナックは、次世代通信規格6G向け半導体の新材料開発を分子レベルから進めるレゾナックは、次世代通信規格6G向け半導体の新材料開発を分子レベルから進める

パッケージング技術などに進化
新技術が続々登場

 半導体は、EUVリソグラフィーによる微細化が限界に近づきつつあるとされる中、製造プロセスで、パッケージング技術など後工程に対する新たな技術で進化しようとしている。

 半導体業界は、シリコン上に集積される素子は毎年2倍ずつ増加するという「ムーアの法則」に沿う形で、IC高集積化で成長してきた。

 EUVリソグラフィーの実用化で配線幅10ナノメートル以下の配線も現実となる、2ナノが始まろうとしている。微細化の指標「ナノメートル」は、プレーナー型FET(電界効果トランジスタ)ではゲート長そのものを示していたが、3次元のFinFETの登場以降は、その複雑な構造から、特定部分の長さを示すものではなく、象徴的な意味合いが強くなっている。

 開発や製造のコストも膨大になる中で、実装技術(パッケージング技術)の開発が重要になる。その一つのプロセスとしてICデバイスを縦方向に積層する3D(3次元)実装技術が一層注目されている。

 シリコンウエハー上で電子回路を形成し、薄片化した半導体ウエハーを3Dに積層化して、層間をTSV(シリコン貫通電極)を使って通電させるもの。半導体の小型化/高密度化/省電力化、さらに信号伝送と処理速度の高速化など、数多くのメリットが生まれる。演算するロジックチップとメモリー、アナログデバイス・センサーなどをワイヤボンディングなどで3次元方向へ実装し、ワンパッケージに統合する半導体デバイスの量産が進む。

 台湾TSMCや米インテルなどロジックの前工程分野をリードしてきた企業も投資を拡大し、集積技術や先端パッケージング技術開発でしのぎを削る。

チップレット

 「チップレット」と呼ばれる2Dの混載技術も進む。CPUやGPU、SRAMなど、それぞれ最適なプロセスノードや装置で製造されたチップをブロック玩具のように組み合わせ、1枚のインターポーザー上に配置してSoP(システム・オン・パッケージ)技術でワンパッケージに収納する。

 微細化に頼らず半導体の小型化や機能向上を実現。各チップのサイズを小さくできるため歩留まりも向上し、市場投入までの期間を短縮できる。前工程に加えてパッケージング技術にも注力される。

半導体メモリー

 半導体メモリーは、大きく「揮発性」と「不揮発性」の2種類。揮発性メモリーはRAMなどのように、電気が通っているときのみデータの記録ができ、主にパソコン(PC)のメインメモリーとして使用されることが多く、PCのOSやアプリケーションが動作する際の作業スペースの役割。

 一方、不揮発性メモリーはROMやフラッシュメモリーのように、電源を切った状態でもデータを保持でき、SSDやUSBメモリーなどといった、データを保存・記録するためのストレージ(記憶媒体)として使用される。

 半導体メモリーはDRAM、SRAM、NOR/NANDフラッシュメモリーなど、さまざまな種類がある。用途に合わせて電気特性、パッケージサイズ、リードの配置やそれぞれの機能などが世界共通の規格として標準化されている。

ガラス基板

 新技術の開発では、米インテルが昨年、ガラス基板の導入を打ち出し、注目されている。より平たん化でき、堅ろうで、より小さなワイヤを保持できるといった特長が期待できる。

 パッケージ内のチップ数が増加し、それらを接続するワイヤの数が増える中、接続の密度の向上、光電融合などへの対応も期待でき、2020年代後半の投入を目指している。

 ムーアの法則の進化を示すため、「新しいリソグラフィー」とも呼んでいるという。

 どのような種類のガラスが最適かの判断や、金属とデバイスを積層し、微細な穴を追加し、その中にワイヤを通す方法、コンピューター内での動作を通じて熱や機械的な力をどう処理するか、といった課題に取り組んでいる。

パワーデバイス

 パワーデバイスも進化する。OKIと信越化学工業は昨年、縦型のGaNパワーデバイスを可能にする技術を発表した。信越化学が独自改良したQST基板(GaN成長専用の複合材料基板)から、OKIのCFB技術(基板から剝離する技術)を使い、GaN機能層だけを剝離し、異種材料基板へ接合する技術。縦型導電が可能となり、大電流を制御する縦型パワーデバイスの実現と普及につながる。

 従来は横型デバイスが主流だが、今回の技術では、信越化学がQST基板などを提供。OKIがパートナーリングやライセンスでCFB技術を提供することを想定する。

 GaNデバイスは高耐圧が求められるパワーデバイスや、Beyond 5G向けの高周波デバイス、高輝度なマイクロLEDディスプレーなど、高デバイス特性と低消費電力を両立する次世代デバイスとして注目されている。