2024.01.18 【情報通信総合特集】ICTベンダートップに聞く 24年の見通し・経営戦略 日立製作所 永野勝也執行役専務デジタルシステム&サービス日本事業統括兼社会ビジネスユニットCEO

顧客への提供価値最大化
IT×OTの強みを発揮

 成長のけん引役の一つ「デジタルシステム&サービス(DSS)セクター」の事業環境を見ると、デジタルトランスフォーメーション(DX)が幅広い業種に広がっており、事業環境は好調だ。

 デジタル技術を活用して新しいビジネスモデルに変革する攻めのDXを進める機運が高まってきている。この傾向は今年も続くとみている。

 2024年度は、中期経営計画の最終年度となるが、確実に中計のステップを踏んでいる。日立が持つOT(制御・運用技術)にITを掛け合わせる強みを発揮し、特に社会インフラ関係でユースケースを増やしている。エネルギーマネジメントの需要も、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量を実質ゼロ)の実現という社会要請を背景に伸びている。

 例えば、新しい系統運用のシステム「次期中央給電指令所システム(中給システム)」を受注した。電気の使用量と発電量のバランスを取る役割を果たしている中給システムは一般送配電事業者のエリアごとに開発されてきたが、各社が中給システムを共有できるよう支援し、電力の安定供給に貢献していく。

 海外と国内の市場がボーダレス化している。国内事業を統括する立場だが、海外の事業をよく見ながら、日立グループのグローバル成長に貢献することを意識している。

 日立グループが「One Hitachi」の総力でデジタル事業を進められることが強みと思っている。

 長年の構造改革で(スイスの重電大手)ABBのパワーグリッド事業や(米IT大手)グローバルロジックを買収するなど、グローバル成長に向けた基盤を構築してきた。海外で蓄積した知見や実績を生かしながら、日本の顧客が求める価値に合わせて、最適な製品やサービスを取りそろえて提供していきたい。

 さらに、生成(AI)が生み出す価値を探索していきたい。人間の知的活動の中に適用する事例を積み上げたい。例えば、新製品の市場価値はどの程度かを見極めるフェーズに生成AIを役立てる展開が想定される。最も価値の高い何かを見つける場面にも生成AIを生かしていきたい。

 目指す姿は、グループ内のシナジー(相乗効果)を引き出すことで顧客に提供する価値を最大化する「コングロマリット・プレミアム」だ。その際に、ITとOTを掛け合わせて新しい価値を創造できるという強みを生かしていきたい。日立全体がデジタルを活用して伸びているという姿を描いて、早く顧客に還元したい。