2024.01.18 【情報通信総合特集】ICTベンダートップに聞く 24年の見通し・経営戦略 東芝デジタルソリューションズ 月野浩取締役常務ICTソリューション事業部バイスプレジデント(東芝常務執行役員)

ソフト開発力で市場開拓
データビジネス育成に注力

 ICT市場は満遍なく上向いており、ICT投資が力強く復活している。東芝デジタルソリューションズ(TDSL)の2024年3月期業績は、おおむね計画値通りの着地となりそうだ。特に官公庁向けビジネスが底堅く推移し、利益に貢献した。鉄道や高速道路といった社会インフラ関連の需要も上向いている。

 生産現場を効率化する対応が待ったなしの状況となる中、製造業の顧客からの需要も拡大する傾向にある。23年4月には、IT領域を得意とするTDSLとOT(制御・運用技術)領域を強みとする東芝インフラシステムズの連携によるビジネスを強化するため、双方に「スマートマニュファクチャリング事業部」を設立した。ITとOTを掛け合わせる強みを発揮し、さらなる事業拡大を目指す。

 24年も、顧客の投資意欲は堅調に続くとみている。新型コロナウイルス禍で働き方を変える動きが加速したことに加えて、生成AI(人工知能)を業務の効率化につなげる取り組みへの関心も高まってきた。

 TDSLでは、新規事業の開拓にも注力している。一つがデータビジネスだ。気象レーダーから受信した観測データをリアルタイムで解析し、気象状況を高精度に予測する「気象データサービス」の提供を昨年5月から始め、良い感触が得られている。

 東芝は量子の世界でリーディングカンパニーとなるため、技術力の強化に取り組んでいる。量子技術の社会実装を加速するため昨年9月には、英ケンブリッジのサイエンスパークに「量子技術センター」を開設した。また、膨大な選択肢から最適な解を見つけるソフトウエア「シミュレーテッド分岐マシン(SBM)」を実際の株式取引に応用し、有効性を確認した。

 (次世代暗号技術の)量子暗号通信の事業化に向けては、英国やシンガポールなどの世界各国で実証実験を進めている。引き続き、量子技術のユースケース(活用事例)づくりに力を入れていく。

 東芝は上場廃止後の昨年12月22日、新たな経営体制を発足させた。これを機に四つの分社体制を廃止し、東芝の島田太郎社長がTDSLなどの子会社4社の社長を兼務する体制に移行した。これを機に東芝は一体となってビジネスを強化していく。

 TDSLとしては24年以降、ソフト開発の中核企業としての役割を担う。培ったソフトの知見や人材を集約し、ソフト開発の効率化も追求したい。