2024.03.17 半導体関連の増産投資、各社が積極姿勢 TSMC誘致も引き金に

半導体の世界市場予測

26年の稼働を予定する三菱電機の新工場26年の稼働を予定する三菱電機の新工場

富士フイルムが1月25日に開催したCMPスラリー設備の始動式の様子富士フイルムが1月25日に開催したCMPスラリー設備の始動式の様子

 半導体受託製造の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)の熊本進出をはじめ、半導体市場が過熱している。関連する材料各社も増産を積極化するなど、将来的なさらなる需要増を見越した動きを本格化している。

 今や生活に関わるあらゆる機器に半導体は搭載され、社会を支えるインフラ制御にも使われるようになった。スマートフォンからパソコン(PC)、テレビ、白物家電、自動車、データセンターにあるサーバー群など、あらゆる電子機器に必要不可欠な存在になっている。「産業のコメ」と呼ばれる理由もそこにある。

 そんな半導体が今、TSMCの熊本誘致をきっかけに関連産業を巻き込み、国内市場の活性化につながりつつある。

 「極めて高い省エネルギー性能のクリーンルームを導入することで、環境に優しい最先端SiC(炭化ケイ素)半導体ウエハー工場を実現する」。三菱電機が熊本県菊池市で13日に開いたパワー半導体用ウエハーの新工場起工式で、こう宣言したのは竹見政義上席執行役員半導体・デバイス事業本部長だ。

 三菱は2026年の稼働を予定し、SiC8インチウエハーの新工場建設を進めている。新工場の稼働でSiCウエハーを22年度比で約5倍に拡大させる計画だ。

 SiCウエハーを使った半導体は、高温でも安定して動作するなどシリコンベースの半導体に比べて高い特性を持つ。そのため、電気自動車(EV)向けの需要拡大にも期待が寄せられている。

 こうした半導体関連の増産投資の動きは三菱に限った話ではない。

 JX金属も半導体用スパッタリングターゲットを中心とした半導体材料の増強に動いている。茨城県ひたちなか市で建設を進めている「ひたちなか新工場(仮称)」で生産し、試運転開始は25年度中を目指している。

 クラボウも半導体関連の材料増産に乗り出している1社だ。半導体製造装置に使用される高機能樹脂製品の生産能力を現状の2倍以上に拡大する計画で、熊本事業所(熊本県菊池市)に新棟を建設中。2025年4月の操業開始を目指している。富士フイルムも1月末、熊本県菊陽町の工場に約20億円を投じ、半導体製造プロセスの基幹材料であるCMPスラリーの最新設備を始動させている。

 半導体は元々、電気をよく通す金属などの「導体」と電気をほとんど通さないゴムなどの「絶縁体」の中間の性質を持つ物質・材料(シリコン)を指す。半導体出荷金額の8割強はICで占められ、この中にはコンピューターの心臓部に当たるCPU(中央演算処理装置)や、情報記録・保持に用いられるメモリー、アナログ信号の処理や電源・動力制御を行うアナログICなどが含まれる。

  世界の半導体メーカーが加わる世界半導体市場統計(WSTS)が昨年発表した秋季半導体市場予測では、24年の半導体市場は5883億ドルと前年比13.1%の増加が見込まれている。日本市場も今年、8.0%増と成長が再加速し、市場規模は約7兆1221億円になると予測している。