2024.03.31 ポータブル電源、能登半島地震の被災地で活躍 キャンプ場や美容院の現場に記者が密着

キャンプ場前に広がる海を指さす濱野社長

 アウトドアシーンでの利用にも近年、注目が集まるポータブル電源。1月1日に発生した能登半島地震では、ジャクリやエコフロー、ブルーティ、アンカーなどの主要メーカーがポータブル電源を被災地に提供し、電源を確保できるよういち早く動いた。実際、被災地ではどのように活用されていたのか―。エコフローテクノロジージャパン(東京都江東区)が支援した石川県珠洲市の現場を記者が訪れ、使われ方に密着した。

 現地を訪れたのは、地震から3カ月が経過しようとしていた3月中旬。災害発生時には食料や水などに加え、情報収集やコミュニケーション手段として使われるスマートフォンの電源を確保したいという声も最近では多い。

 そうした声に応えるために、エコフローは、地震発生の翌日には支援を発表。物流網がない中でも配送トラックを手配し、バッテリー容量1024Whの「DELTA2」や容量3600Whの「DELTA Pro」などのポータブル電源76台に加え、太陽光パネル17枚を被災地に提供した。

キャンプ場復興に向け

 「あれば安心」。ポータブル電源についてそう語るのは、珠洲市で屋根工事を行う浜野産業の濱野達也社長だ。

 濱野社長はキャンプ場も経営している。地震当日は利用客らとともにキャンプ場で被災し、キャンプ場にある建屋で4~5日間過ごした。薪ストーブで暖を取り、キャンプ道具を使って食材を料理できたというが、停電は続いていた。  

 そんなときに、利用客の1人がエコフローに支援物資を要請。「DELTA Pro」が3台、夜中のキャンプ場に届き、LEDライトとスマホの充電に使うことができた。さまざまな機器に同時給電できるポータブル電源の利点を実感したという。

 現在、濱野社長は、キャンプ場の再建を目指したプロジェクトをクラウドファンディング「CAMPFIRE」で実施中だ。当初目標の500万円という金額は公開4日で達成し、新たに1000万円を目標に設定。能登の美しい海に面したキャンプ場の復興に向けて前に進んでいる。

復興に向けて歩み出した瓶子社長

電動チェアやドライヤーに活用

 珠洲市のヘアーサロンHEISHIも、ポータブル電源に救われた1店。電気が復旧するまで「DELTA Pro」を活用し、店内の電動チェアやドライヤーへの給電に使った。

 瓶子明人社長は、地震発生直後に店舗兼自宅周辺の家屋が倒壊していく様子を目の当たりにした。自身の店舗も大きな被害を受けたが、それでも電気が復旧する前から「お店を開けて欲しい」というお客からの要望が多かった。そんな中、近所の街の電器店からエコフローが支援したポータブル電源を貸してもらい、こうした声にできるだけ応えた。

 今後は、被害を受けた現店舗を取り壊し、仮設店舗を建設する構想もある。その際には、防災対策の一環としてポータブル電源の購入を視野に入れるほか、太陽光パネルの設置も検討している。

復興道半ば、協力し合い笑顔に

 取材当日は、金沢駅から約140キロメートル離れた珠洲市に車で向かった。道中、何台もの「災害派遣」と書かれた車とすれ違い、1階部分が崩れた住宅の2階からは、窓あたりからエアコン室外機がぶら下がっている光景も見られた。

 町中には「洗濯できます。無料」の看板も。取材に応じてくれたヘアーサロンHEISHIの店先にも、洗髪をしたい人に向けて「無料でシャンプーします」と書かれた紙が掲示してあった。

 HEISHIの店内に設置されているテレビの周りには、「100点」の数字が映ったモニターのそばで、笑顔とともにピースサインをする人の写真が何枚も貼られていた。瓶子社長は「震災後、暗い気分を晴らす思いで、店内でちょっとしたカラオケ大会を開いた時に撮影したものだ」と話してくれた。

HEISHIのテレビの周りに貼られた地域住民の笑顔の写真