2024.04.02 AI半導体向け材料 生産能力最大5倍に レゾナックが150億円投資

放熱シート「TIM」

絶縁接着フィルム「NCF」絶縁接着フィルム「NCF」

 レゾナックが、人工知能(AI)半導体向け材料の生産能力を大幅に増強する。約150億円を投じ、AIなど高性能半導体向けの絶縁接着フィルムや放熱シートの生産能力を従来の3.5倍から5倍規模に拡大する。2024年以降、生産設備を順次稼働する予定だ。

 増産するのは、絶縁接着フィルム「NCF」と放熱シート「TIM」。いずれも高性能半導体向けに既に採用されている。タイムリーに生産能力を拡大することで、市場での優位性を強固にする狙いだ。

 NCFは、高性能半導体に搭載されるHBM(広帯域幅メモリー)と呼ばれるメモリーを接続しながら、多段積層するために使用される。NCFには接着力とデバイスの接続信頼性に加え、サブミクロン単位の厚みの精度が要求される。同社は、NCFの前身にあたるダイボンディングフィルムの開発・製造で長年培った技術や経験を生かし、要求される品質を実現している。

 TIMは、高性能半導体の放熱用に使用。発熱するチップの熱を素早く放熱する熱伝導性と、繰り返しの温度変化に耐える信頼性や、チップと冷却器の微小な凹凸に密着する柔軟性が求められる。同社は、独自技術を使い、柔軟なシート材に特殊な形で黒鉛粒子を加えることで、要求される性能を達成している。

 現在、高性能半導体を前工程で進化させることは、技術とコストの両面から限界が近づいているとも指摘されている。このため近年では、後工程で複数のチップを高密度に実装し、高機能化を実現する3Dパッケージなどの技術がカギを握る。

 AI半導体市場は、27年には22年の2.7倍に拡大すると予想されている。

(後日電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)