2024.05.23 大阪・関西万博に採用されたNECの顔認証とは 少ない特徴量で本人を識別

大阪・関西万博の会場店舗に設置される顔認証決済の専用端末

23日にはNEC本社で顔認証決済の実演デモが行われた=東京都港区23日にはNEC本社で顔認証決済の実演デモが行われた=東京都港区

 大阪・関西万博の顔認証システムに採用されたNECは、この分野で世界的に研究開発をリードしてきた。NECの顔認証とはどんな技術なのか。

 原動力となったのが、高精度に本人を識別する「特徴量抽出手法」だ。「本人」と「似ている他人」の境界付近にあるデータのみに着目し、人工知能(AI)で分析する機械学習・深層学習を取り入れ、本人と他人を少量の特徴量で識別できる。顔情報をそのままの見た目で照合している訳ではなく、特徴点を捉えて解析するため、マスクをしていても他人か本人かを見分けることができるという。

 米国立標準技術研究所(NIST)による2018年の評価では、160万人規模のデータベース上で認証エラー率0.4%、検索速度1秒あたり2.3億件を達成し、世界トップの評価を獲得。21年には顔認証を活用した搭乗手続き「Face Express」が成田・羽田空港で稼働をはじめ国内主要7空港で導入されたほか、世界で延べ80を超える空港で出入国管理や税関申告、搭乗手続きなどに活用されている。

 21年夏に開催された東京五輪・パラリンピックでも、全競技会場や大会関連施設の入場ゲートに、NECの生体認証技術「バイオイディオム」を基盤とする顔認証装置を配備した。ICチップを搭載したIDカードと、事前に撮影した顔の画像をシステム上で紐づけ、選手やスタッフら関係者全員の本人確認に使用された。

 顔認証の研究開発が始まったのは1989年。文字認識の研究で確立したパターン認識技術を応用する形でスタートし、02年には顔認証AIエンジン「NeoFace」の名称で製品化したのが大きな一歩となった。

 顔認証は、顔の向きや照明、経年変化などさまざまな変動要素があり、生体認証の中でも複雑な技術。無限にある組み合わせに対して機械学習を使うことで理論立てて解ける方法を確立していった。

 ブロックチェーン技術の活用により構築される次世代の分散型インターネット「Web3」など、新たなサービスを安全に利用するには、個人が自分自身であることを証明するためのデジタル本人認証が重要な要素となる。「顔」というだれもが持つ情報を使って煩雑な手続きを簡素化し、効率的な認証方法を提供する顔認証技術は、今後さらに注目されそうだ。