2024.07.12 【電子部品技術総合特集】電子部品メーカー、国内研究開発体制拡充へ投資活発化

今春竣工(しゅんこう)した、ヒロセ電機の東北アドバンスト・テクノロジーセンター(盛岡市)

拠点開設や設備増強 加速

高度人材の採用や育成も

 電子部品メーカー各社の国内研究開発体制拡充に向けた投資が活発になっている。電子部品に対する技術要求の高度化への対応や、次世代技術トレンドを見据えたイノベーション、新規事業創出や新規市場開拓、モノづくり革新などを図るため、国内において新たな研究開発拠点の開設や試験・評価設備の増強などの動きが加速している。

 同時に、脱炭素/カーボンニュートラル対応のための環境配慮型素材や再生材料活用などの材料分析技術の高度化、AI(人工知能)技術の製品設計や製造工程での活用拡大に向けた研究などにも力が注がれており、これらを実現するための高度人材の採用や育成のための投資も盛んだ。

 国内研究開発体制の再構築では、老朽化していた中核R&D拠点からの移転・拡張による新技術センター開設や、従来の中核拠点に次ぐ第2の国内開発センター開設、これまで分散していた開発拠点を集約した大型の研究開発拠点の新設などが進んでいる。ソフトウエア開発に特化した拠点の新設や、生産技術力強化のための新技術センター開設などもみられる。

 これらを受け、優秀なエンジニアを採用しようという動きも強まっている。最近では関西に本社を置く主要電子部品メーカーが首都圏エリアに大型の研究開発拠点を開設・整備するケースも増えた。

 国内研究開発拠点をオープンイノベーションの促進に積極活用する部品メーカーも目立つ。施設内に、社用専用エリアに加えて「共用スペース」などを設置し、社内外の多くの人々が出会い、活発に交流、触発、協力しながら新たな価値を生み出すための取り組みなどが進む。

 顧客やアカデミア、スタートアップといった社外パートナーとの共創空間を設けることにより、他社とのコラボレーションを通じた新領域の開拓や技術のブレークスルーなどを目指す。

 主要電子部品メーカー各社は、新規領域を切り開いていくため、既存の電子部品技術の深掘りにとどまらず、部品周辺技術やアプリケーション側を含む技術の蓄積に力を注いでいる。さらに、「モノ売り」から「コト売り」へのシフトに向けた新たな事業モデル構築の動きも加速。メーカーによっては、サブスクリプション型の新規事業開発に乗り出すところもある。

 このため各社が採用する技術系人材も、従来の電子部品技術者だけでなく、AI関連やIT関連、半導体設計、ソフトウエア・システム技術者など多様化。自社エンジニアへのAI教育なども行われている。さまざまな技術を有するエンジニアを採用・育成することで、10年、20年先を見据えたイノベーションが志向されている。