2024.07.19 【やさしい業界知識】サーモグラフィーカメラ

設備の遠隔監視に対応するサーモカメラ

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非接触で広範囲の温度検知

予知保全、半導体工程で使用

 赤外線を使ったサーモグラフィーカメラは、電気設備の保守点検、建物や太陽光パネルの劣化・異常診断、温度管理の分野で幅広く活用されている。

 赤外線は目に見えない不可視光で、温度を持つ全ての物体から放射されている。高温になるほど、放射される赤外線の放射量が大きくなる性質を利用し、サーモカメラは非接触で物体の表面温度を検知して温度分布を熱画像化する。

 また、広い範囲の温度を迅速に把握でき、大きな施設や屋外環境の温度分布を可視化できる。夜間でも画像情報の取得ができるため、赤外線を使ったセンシング技術は暗視装置として軍事面での研究が先行した。現在では防犯監視や車載機器、医療など、さまざまな用途で活用されている。

コロナで需要急増

 新型コロナウイルス感染症の拡大期に、サーモカメラを用いて発熱者を推定するための体表面温度スクリーニングで需要が急増した。

 以前から産業用途としての利用が多い。自動車のブレーキ時の制動やタイヤが路上を走行する際の温度範囲、エアバッグの膨張時の温度分布など、さまざまな研究開発用途でも活用される。特に1秒間に数千~数万フレームといった極めて速い温度範囲を撮影するためには高速カメラでは追い付かず、ハイエンドのサーモグラフィーカメラが効果的だ。

 また、プラント設備や建築物、道路などのインフラの維持管理にも重要な役割を果たす。定期点検や遠隔監視などにサーモカメラを用いることで、設備のベアリングや電気回路の過熱を発見し、予知保全につなげられる。

ウエハー製造時に

 半導体工程では、シリコンウエハーを製造する時に、シリコン融液からインゴット(円柱状の単結晶の塊)を引き上げる際の温度計測に適用。シリコンの融点は約1410度で、温度の低下はウエハーの品質に影響が及ぶため、温度の管理が非常に重要となる。

 製造プロセスでは、薄膜に回路パターンを施すためにフォトレジストと呼ばれる感光性樹脂を塗布する。ウエハー上に滴下したレジストが均一かどうかを判定するためにも赤外線カメラが使われている。研磨したウエハー表面は鏡状のため赤外線を反射しやすいのに対し、塗布したレジストは透明で反射しにくいため、塗りむらが判断できる。

 研究開発向けのハイエンド製品では、赤外線の感度を上げるために検知素子を冷却するタイプもあるが、現在では非冷却型で小型軽量のものもリリースされている。(おわり)