2020.06.03 相模湾で波力を活用した発電の実証開始

本格的に稼働が始まった平塚波力発電所

建設工事が進む波力発電所建設工事が進む波力発電所

地元企業も加わって建設が進んだ地元企業も加わって建設が進んだ

設備は海底に固定されている設備は海底に固定されている

空から撮影された工事の様子空から撮影された工事の様子

今回の縁のきっかけとなった相模湾の実験設備今回の縁のきっかけとなった相模湾の実験設備

 再生可能エネルギーの一つ、波力を活用した発電の実証が、神奈川県平塚市の相模湾で始まった。

 東京大学の生産技術研究所などのグループが提案する技術を採用した装置で、1年間続ける予定。世界的にも実例がない商用化を視野に入れての取り組みとなる。

 同市の平塚新港の防波堤の南側約20メートル沖に「平塚波力発電所」として開所した。環境省の委託を受けて、20年2月に送電線につなぎ試運転を終えて、5月下旬から本格稼働を始めた。

 波力発電は、海で自然に起こる波のエネルギーを利用した発電。

 今回の設備では、アルミやゴムなどでできた板状の「ラダー」(縦4×横8メートル)を水深約6メートルに海中に沈め、沖から岸に打ち寄せる波のエネルギーを利用して、シリンダーを通してモーターの回転運動に変えて発電する。

 波の高さ約1.5メートルで最大出力を45kWと設定し、発電した電力は東京電力に無料で提供する。

 波力は、変動性が大きい太陽光などに比べて設備利用率の高さが期待できる。

 今回は、発電所と岸の間に反射板を打ち込むことで、沖に戻る波にもエネルギーを残して効率よく発電できるようにして、設備利用率35%を目指している。

 さらに、波力は風力と比較しても、波の強弱の状況を予測しやすいなどのメリットもあるという。

 同市の相模湾には、波の高さや風、海温などを観測できる同研究所の実験設備が設置されている。

 そうした縁から、同研究所で海中観測工学を専門とする林昌奎教授らのグループと同市が協力。

 16年から市内の企業などを巻き込んだ「平塚海洋エネルギー研究会」を設立し、商用化に向けて検討を進めてきた。19年3月には、発電所を具体化するために連携協力協定も締結した。

 同研究所は16年ごろから、初めて系統に接続させた波力発電所を岩手県久慈市に設置し実証を進めてきた。

 その実績を踏まえ、平塚市では、小さな波でも効率的に発電できるように改良した新型設備を導入した。

 今回の実証は21年3月末まで。データなどを分析したうえで、その後、順調にいけば、さらに波エネルギーの強い海岸で、複数のラダーを並べて発電量を増やした発電所を建設。コストダウンさせて商用化に乗り出す構想もあるという。

 平塚市産業振興課の担当者は「現状では先頭を走っている実証であり、成功すれば、商用化にかなり近づく第一歩となる。全国への普及の後押していきたい」と話している。