2024.11.08 【育成のとびら】〈37〉内定者が入社に向けて期待すること 2位は「給与がもらえる」 1位は……
学生から社会人になることは、人生で大きな転換点の一つだ。例えばコミュニケーションにおいても、自分の感情が軸となっていた学生に対し、社会人は組織の中で周囲の人と協力しながら、責任を持って自身の役割を遂行していくための手段となる。その意味でも考え方を大きく変える必要がある。
こうしたマインドや行動の転換を図ることが、新社会人の最初の試練となるだろう。
一方、社会人として働くことは試練・苦労ばかりでなく、代えがたい喜びややりがいをもたらすものでもある。実際、内定者が入社前に抱く感情として、「不安」に続いて「期待」の回答割合が高かった。まだ学生である内定者は、社会人になるに当たって、具体的にどのような期待を抱いているのだろうか--。
当社ALL DIFFERENTとラーニングイノベーション総合研究所が、2023年10~12月に内定者404人に行った意識調査をもとに考察していきたい。
調査によると「入社に向けてどのような期待があるか」との質問に対し、「いろいろなことを学び成長できる」が最も高く、67.0%だった(図)。
次いで「給料がもらえる」(50.9%)、「社会の役に立てる」(40.2%)、「自分の実力や能力を試せる」「新しい出会いがある」(ともに37.5%)となった。
回答結果は、いわゆる「Z世代」の価値観が色濃く反映されたものと言える。「学び・成長」の回答割合が最も高かった結果は、組織に依存しないキャリア形成の在り方を模索する、「キャリア志向」とつながっている。
逆に「どんな状況でも生き抜く力を身に付けられている」という成長実感が得られなければ、期待は失望へと変わり、早期離職という選択をする人も現れるだろう。
給与の次に「社会の役に立てる」という回答が高かった点も、社会貢献意欲が高いと言われるZ世代の価値観と一致している。
育成方法の更新
どのような仕事であっても社会から必要とされているからこそ、事業が成り立っているとも言える。
しかし、特に業務経験の浅い新入社員は、目の前の業務がどのように社会に貢献しているのか実感しにくいため、内定者の段階から自社の理念や事業全体の意義の伝達と浸透が重要になる。
理念や事業の意義と配属先の業務がどのように結び付いているのかを丁寧に伝えることで、事業の理解促進と納得感の醸成につながり、配属後の指導や育成にも影響してくるはずだ。
24年の内定者はZ世代であり、コロナ世代でもある。
社会全体がコロナ禍の前と後で、働き方などで不可逆的な変化を経たと言われており、内定者の受け入れ準備や新入社員の育成においても変化へ対応する必要がある。
劇的な変化の中で育ってきた彼らの価値観や環境に合わせて育成手法をアップデートしなくては、新入社員としての立ち上がりが困難になることは必至だ。
次回は、スマートフォンを活用して内定者育成に取り組み、社会人としてのマインドセットの醸成を図った事例を紹介する。(つづく)
〈執筆構成=ALL DIFFERENT〉
【次回は11月第4週に掲載予定】