2025.01.09 【電子部品総合特集】部品メーカートップに聞く 2025年の経営戦略 日本電波工業 加藤啓美社長
加藤 社長
人材とITに積極的に先行投資
2024年度の車載用水晶デバイス市場は、自動車生産が伸び悩み、中国系EV(電気自動車)の躍進で日米欧自動車メーカーのシェアが低下傾向だが、それでも5%程度の伸びは見込める。
当社はこれまで車載に軸足を置いた展開を推進してきたが、ある程度成果が出てきている。移動体通信関連は、スマートフォンの生産台数は頭打ちだが5G比率は今後も上昇するため、5G端末で使用されるフォトリソブランク需要は今後も成長が見込まれる。
小型化と高周波対応の両立により今後も差別化を図っていく。加工技術も進化させる。もう一つは、小型化すると抵抗値が高くなるため、これを克服する必要がある。低い周波数でもフォトリソ加工を適用し、それを車載イーサネットなどに展開することで、車1台当たりの水晶デバイス販売個数増につなげていきたい。
産機関連は、5G基地局やFA市場が低調だが、AI(人工知能)サーバーや光トランシーバー市場が急速に拡大しており、これらにより車載の鈍化をカバーしていきたい。AIサーバーや光トランシーバー向けの水晶デバイス市場は、30年に向け年率平均30%位の成長が見込まれる。
新規市場開拓では、カメラ用光学ローパスフィルターは今期はかなり増えている。半導体製造装置向けの高出力レーザー用水晶波長板の提案も引き合いが出てきた。QCMセンサーの半導体製造装置向けの提案も進める。
また、新たな事業として、半導体デバイス向けのウエハー加工ビジネスも考えている。
今後の投資計画は、フォトリソ関連の設備投資を進めるとともに、SAPシステム導入と、それを応用するシステムへの投資を推進する。DX投資と高速ラインへの移行を進めることで、無人化を目指していく。
30年に売上高を1000億円にする長期目標を立てているが、スマートファクトリー化推進により、新たな工場を建設することなく1000億円を達成可能と考えている。
これまでの3年間は「ホップ」、今後の3年間は「ステップ」、そして30年に向けて「ジャンプ」していく。先行投資として、人材投資とIT投資に積極的に取り組む。