2025.01.10 【放送総合特集】放送機器各社 25年の戦略 パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション 津村敏行副社長執行役員兼イメージングソリューション事業部長

津村 副社長

シナジー商品を短期間で開発

27年度までに事業規模125%以上に

 昨年4月、パナソニック コネクトに所属していたプロフェッショナルAV事業が、パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション(PEAC)に統合され、新たにイメージングソリューション事業部として発足した。

 PEACは、ミラーレスカメラを中心とするコンシューマーイメージング事業と、映像制作システムと業務用音響・放送システムを提供するプロAV事業により、多様なクリエーターのニーズに応える映像と音響を、トータルソリューションで提供している。

 こうした両事業部のリソースを集約することで、業界の変化やニーズへの迅速な対応とともに、価値提供のさらなる拡大を目指している。

 昨今、人手不足やコスト削減に対応できる業務効率化のニーズが高まっており、IT/IPプラットフォーム「KAIROS」を中心に、省力化、省人化で、映像クオリティーの向上と業務効率化の両立が可能なシステムに注力してきた。2024年度上期は非常に好調だった。

 KAIROSは、非常に使い勝手に優れていて、ソフトウエアのバージョンアップによって機能拡張や外部機器との連携もできることから、好評を得ている。国内では、オンプレミスは20年9月の提供開始以来、52社、109式を受注している。

 スタジオのIP化による運用の効率化、スタジオ間のリソースシェアによる効率化、放送局間のリモートプロダクションによる運用の効率化や中継車レスの実現など、リモートプロダクション、リソースシェア用途で活用が拡大している。

 近年、民生用カメラの技術とプロAV系で使われる製品の技術領域はボーダーレスになってきている。昨年は双方の市場で培ってきたナレッジをいかにうまく活用し、ユーザーのニーズに迅速に対応し、価値を高めていくかということに注力してきた。

 民生用カメラはよりクオリティーの高いカメラの需要が好調だった。プロAV系はアメリカでの需要が活況で、新製品の導入が進んだ。特にアウトドア系の防水のリモートカメラなどの需要が増えた。また、文教や企業向けのオーディオシステムが非常に好調に推移した。事業全体で当初の見通し通り堅調に推移している。

 昨年11月に行われたInter BEEで、「LUMIX」のコンシューマー事業とプロAV事業の強みを生かした、新しいボックス型4Kマルチパーパスカメラ「AW-UB50」と「AW-UB10」を初公開し、高い関心を集めた。24年度中の製品化を予定している。

 両カメラは、コンシューマー事業とプロAV事業が統合したシナジー商品の第1弾だ。ミラーレス一眼カメラLUMIXシリーズのテクノロジーをベースに、業務用放送システムに組み込んだ際の運用を容易にするため、当社製リモートカメラシステムとの連携を可能とするIP制御プロトコルにも対応している。シナジー効果により、短期間での開発、市場投入に成功したと考えている。

 交換レンズ式カメラなので、海外製品も含めて幅広くレンズを選択できることも特長の一つとなっている。当社はミラーレスカメラの交換レンズの互換性についての戦略的協業「Lマウント アライアンス」に参画している。

 このように、ユーザーの選択肢を広げ、多様化するニーズに対応していく考えで、今後もお客さまの期待に応える製品開発をしていく。25年以降もスピードを加速して進めていきたい。

 今年もIP化、自動化、省力化、業務効率化の流れの中、KAIROSを中心に、新しいソリューションを生み出し、スポーツ、イベント、企業や文教などの用途にも広げていきたい。

 また、映像コンテンツの多様化により、プロ、民生の垣根がなくなり、ニーズの高まりは今後も続くと予想される。いち早く価値を提供できるよう、ユーザーのニーズに応えていきたい。

 今後、シナジーによるさらなる事業成長を目指す。27年度までに新製品数を20%以上増やす。これに伴い、事業規模を25%以上成長させる計画だ。