2025.01.10 【放送総合特集】25年 年頭所感 総務省情報流通行政局地上放送課 坂入倫之課長
坂入 課長
放送ネットワークの強靱化
中継局共同利用の実現へ
近年、放送を取り巻く環境が変化する中、放送による情報発信を継続するためには放送事業者の経営が安定していることが重要であり、その選択肢を増やすための取り組みを検討・推進してまいります。放送事業者の皆さまにおかれましては、新たな時代の放送事業の発展に向けて、未来を見据えた着実な歩みを進めていただくことを期待しております。
昨年も、能登半島地震をはじめとして多くの災害が発生しました。テレビやラジオは、災害時の情報提供手段として重要な役割を担っています。総務省では、能登半島地震・豪雨での教訓を踏まえて、放送の送信設備などの災害復旧や局舎・鉄塔の耐震対策の支援などにより、放送ネットワークの強靱化(きょうじんか)を進めてまいります。加えて、昨年8月には「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が初めて発表されました。
今後発生する可能性のある広域大規模災害を見据え、放送により必要な地域情報を被災者に届けられるよう、放送サービスの維持・確保方策の充実・強化について検討してまいります。
AMラジオ放送については、放送設備の老朽化に伴う更新費用の負担などに関する課題を抱えています。民間AMラジオ放送事業者の皆さまが経営判断としてFM放送への転換を検討するに当たり、その社会的影響、特に聴取者への影響を最小限にする観点から、令和5年の再免許の際、一定期間AM局の運用休止を可能とする特例措置を設けました。本年1月31日を適用期限として休止が行われています。昨年12月に「AM局の運用休止に係る特例措置に関する基本方針」を改訂しましたが、特例措置の実施状況などを踏まえ、必要な制度整備について検討してまいります。
また、放送事業を行うための固定費用の負担軽減について喫緊の課題であることを踏まえ、経営の選択肢の一つとして可能となった中継局の共同利用などの実現に向けた検討が進められているところであり、昨年12月には、中継局共同利用に向けた準備会社がNHKの子会社として設立されました。今後、この準備会社と各地域の放送事業者が連携し、放送ネットワークの効率化の実現に向けた取り組みが加速することを期待しております。
字幕番組、解説番組および手話番組といった視聴覚障害者等向け放送については、令和4年に改訂した「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」に基づきその普及に向けて放送事業者の皆さまには多大なご尽力をいただいております。字幕番組などの制作費や設備整備費の助成も引き続き行ってまいりますので、放送事業者の皆さまにおかれましては、積極的にご活用いただき、本年は東京でデフリンピック競技大会が開催されることも踏まえ、視聴覚障害者等向け放送の一層の充実に取り組んでいただけますと幸いです。