2025.04.22 【眼鏡型機器の最前線㊦】各国に広がる「視力調整」の潮流 豊富な経験生かし中国市場の開拓狙う

 コントラスト(明暗差)がある映像の力で網膜を動かす――。窪田製薬ホールディングス(HD)が普及を目指す「Kubota Glass(クボタグラス)」の開発は、そんなコンセプトに基づいて2020年に立ち上がった。

 もともとは1日中装用することを想定しコンタクトレンズ型の開発を進めていたが、わずか数時間の装着で効果が確認できたことから眼鏡型に切り替えた。

 主なターゲットは成長期の子どもだが、30代まで効果があると見込む。装着者ごとにレンズの調整が必要で、販売価格は税込み77万円。

 既に量産体制を確保できたことから、本格的な販売に向けてマーケティングを始めた同社。特に熱い視線を注ぐ市場が中国だ。窪田良社長兼CEOは「国家レベルで近視を治そうとしており、(視界がぼやけるデフォーカスを指す)ボケの話を中国の関係者は誰でも知っている。日本では眼科医すら知らない」と指摘する。

 3月からはクボタグラスを、家電製品や住宅設備を提案する施設「二子玉川 蔦屋家電」(東京都世田谷区)に展示している。たが、日本では近視を病気と捉えていない風潮が強い。そこで窪田CEOは、昨年6月に自著『近視は病気です』(東洋経済新報社)を出版するなど、国家を挙げて近視の啓蒙に取り組む必要性を訴えている。

 窪田製薬HDの歴史は、眼疾患の治療法などを開発する前身のベンチャーが米シアトルに創業された02年にさかのぼる。米国やスイスと開発チームを組んで業績を積み上げ、15年12月にはアキュセラ・ジャパン(現・窪田製薬HD)を設立した。16年には本社機能を日本に移した。

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 米国科学・工学・医学アカデミー(NASEM)は昨年9月、近視を病気に分類すると発表。子どもたちに毎日1~2時間屋外で過ごすことを推奨する報告書も公表した。

 世界各国は、深刻化する近視問題が経済に及ぼす影響に注目し、国家規模で近視対策を打ち出している。既にアジアで近視対策を促す機運が向上。シンガポールが01年から国家プロジェクトとして近視抑制に注力するほか、台湾や中国も抑止活動に力を入れている。

 日本には、こうした潮流に乗り遅れないよう近視の危険性を周知する対応が求められている。

(おわり)