2025.04.23 ソニー系のロボット玩具 「プログラミング教材」としても存在感 開発者の田中章愛氏に聞く

toioの生みの親、田中シニアマネジャー

トイオ・プレイグラウンド ベーシックとカードの種類が増えるアドバンスがあるトイオ・プレイグラウンド ベーシックとカードの種類が増えるアドバンスがある

特殊な印刷の紙とロボットのセンサーで位置情報を正確に取ることができる さまざまな技術が込められているが、子供がそれを意識せずに遊べるような工夫も詰まっている特殊な印刷の紙とロボットのセンサーで位置情報を正確に取ることができる さまざまな技術が込められているが、子供がそれを意識せずに遊べるような工夫も詰まっている

 小さな四角いキューブを動かすロボットトイ「toio(トイオ)」が、次世代玩具として注目を集めている。手掛けるのは、ソニーグループ傘下のゲーム子会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)で、2019年に発売。24年には、キューブと専用カードだけで遊べる「トイオ・プレイグランド」を用意した。この玩具をプログラミング教材として生かす狙いは何か。トイオの生みの親、toio事業推進室の田中章愛シニアマネジャーに商品に込めた思いや戦略を聞いた。

◇ ◇

 ―12年にトイオの開発を始めたきっかけについて、教えてください。

 田中氏 子供の頃に欲しかったものを作ろうと思った。ソニーの技術がおもちゃに宿ったらどうなるのか、ゲームなどのエンターテインメントが実際の世界に出てきたらどうなるのかについて考えた。「実世界でゲームを」というテーマで試作を重ねるうちに、自分の作ったものが動き出すことがやはり楽しいと思った。

「楽しい」を具現化

 ―トイオのコンセプトに子供のプログラミング体験が入ったのはいつ頃ですか。

 田中氏 後からトイオで掲げるコンセプトに追加されたわけではなく、プログラミング体験というコンセプトの優先度が上がった。(プログラミングは)記号の世界だけだと分かりづらいが、実世界で動くと分かりやすくて楽しいという声をフィードバックとしてもらい、しっかりやっていこうと考えた。

 12年にトイオを企画した当初は、小学生がパソコン(PC)を使う機会があまりなかった。そんな中でも、プログラミングの感覚を体験してほしいという思いがあった。デバイスが無くてもプログラミングできることには、価値がある。

 PCでプログラミングを行おうとすると、操作方法を身に着けた上で、ファイルやフォルダーなどの用語を覚える必要があり、プログラミングまでの距離が遠い。まずは楽しいという感覚を味わってほしい。

 ―これまでのタイトルと「トイオ・プレイグラウンド」の違いは何でしょうか。

 田中氏 例えば、19年に発売した絵本の上をロボットが動く「GoGo ロボットプログラミング」では、「この動きを作ってほしい」という手引きが付いている。こちらも、プログラミング教材として広く使われている。

 「トイオ・プレイグラウンド」は、カードとキューブだけでプログラミングの体験を完結でき、プログラミングが難しいという意識を取り払える。「自ら作ったものが簡単に動く」という体験の次に、さまざまなカードの特徴を理解して組み合わせを考えるという体験を一歩一歩段階的にできる。カードは大きく3つに機能を分けて、「こっち向く」「早く」「まっすぐ」という風に細分化した。

 また、トイオシリーズ全般に言えることだが、机の上がプログラミングの場だ。そこで起こっていることを共有したり、すぐに修正したりできる。

 ―プログラミングはどういう存在ですか。

 田中氏 プログラミングはシンプルにやりたいことをロボットに伝えて実現するための「言葉」であり、「表現」とも言える。伝え方は文字以外にもあり、ブロックやカードを使うこともできる。言葉遊びもプログラミング遊びもあると思っている。

 ―日本の製造業を担う人材の育成にも役立つ取り組みです。

 田中氏 トイオを通して体験してほしいのは、ゴールに向かって筋道を立て考えることだ。受け身ではなく、何かを作るという楽しさを自ら感じてほしい。将来モノづくりに携わる人材でもそうでない人にとっても、この考え方は貴重な「原体験」になると考えている。

 今後も、幼少期の頃からプログラミングに触れて苦手意識を無くしてもらうという本質的な活動は続けていく。

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 SIEは、トイオ・プレイグラウンドの取り組みとしてカードを組み合わせて挑戦する「ミッション集」を、東京学芸大こども未来研究所の監修で作成している。

 ミッション集では、子供に遊び方を提案し、教育者の目線でも子供にどのような学びがあるかを示している。今後もトイオを通じて、子供の創意工夫を引き出すコンテンツの展開に力を入れていく。