2025.07.11 【電子部品技術総合特集】アプリケーション別動向
車載用5Gモジュール
各種センサーなど開発を進める
ADAS/自動運転関連部品
自動運転車両の実現には、車外通信性能の高度化や高精度な物体認識、高度な車両制御、AI(人工知能)やエッジコンピューティングを含む情報処理技術などさまざまなテクノロジーの融合が必要。搭載部品への信頼性要求も極めて高い。
電子部品各社は、これらを実現するための要素として、各種センサーや制御デバイス、通信系デバイス、EMC/ノイズ対策用部品、撮像系部品、大容量高速伝送用部品などの開発を活発化させている。
ADAS/自動運転向けのセンサーフュージョンでは、高画素センシングカメラやミリ波レーダー、LiDAR(ライダー)、赤外線センサーなどの開発が活発。走行中の車の周辺情報を高精度に認識するため、近距離検知、中距離検知、長距離検知など、目的に合わせてさまざまな車載用センサーが開発されている。
自動運転レベル3以上で必須とされるLiDARは、既存の機械式に加え、ソリッドステート式LiDARの開発も進展している。車載カメラは、従来のバックモニター用カメラから、車載センシングカメラへと進化し、高画素化と伝送速度向上のためのデジタル伝送化が進んでいる。最近の車載カメラは、1メガピクセルへの移行が進展し、今後は2メガ/3メガクラスへの移行も進む見通し。
統合ECUのHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)シフトに照準を合わせた高周波デバイスや放熱デバイス、ノイズ対策部品の技術開発も進む。
さらに、将来の完全自動運転車での車室内のビジネスルーム化やリビングルーム化に照準を合わせた、車載用映像・音響機器向けソリューションの先行開発・提案に力を入れる部品メーカーも増えている。
高効率パワーデバイスなどに注力
電動車用部品
BEV(バッテリーEV〈電気自動車〉)やPHV(プラグインハイブリッド車)などのxEV(電動車)では、モーターを駆動するため、インバーター、DC-DCコンバーター、車載充電器、電池システムなどの主要構成ユニットにさまざまな電子部品が使用される。

モーターは、小型でハイパワー化を図るため、高性能なマグネットが使用される。インバーターやコンバーターは、小型で高効率が求められ、高電圧で駆動するパワーデバイスが欠かせない。通常のIGBTはシリコンベースのウエハーを使用するが、最近はSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などの新たなウエハーを用いた高効率パワーデバイス開発が活発化している。
こうした動きに伴い、コンデンサー、抵抗器、トランス/コイルなどの受動部品では、高周波スイッチング、高電圧化に対応した新製品開発に弾みがついている。コンデンサーは、小型、大容量、長寿命、低ESRなどの特性向上が追求され、抵抗器は小型で高電圧、大電力、低抵抗化などが追求される。トランスやコイルは、小型で低損失、高効率化などに向けた技術開発が進展している。
車載充電器は、小型で高速充電などが要求され、小型で大容量のアルミ電解コンデンサーなどの新製品開発が活発化している。
xEVでは、1充電当たりの走行距離向上に向け、車体軽量化も重視されるため、部品の軽量化追求にも力が注がれている。モーターとインバーター、ギアなどを一体化したユニットである「E-Axle(Eアクスル)」用部品の開発も進む。
また、EVバッテリーの弱点である極低温環境下での性能確保に向けた技術開発にも力が注がれる。
EV急速充電用コネクターは、日本、北米、欧州、中国などグローバルの各地域ごとに異なる充電規格が乱立する中で、コネクターメーカー各社は各種仕様に準拠した製品ラインアップの拡充に力を注いでいる。
幼児やペット置き去り監視も
安全・快適系部品
最近の新車開発では、差別化促進のため、乗員の安全性や快適性、利便性向上のためのさまざまな機能付与が進んでいる。特に日米欧などのプレミアムカーでは、機能拡張が年々進み、車載用電子部品の新規需要を創出している。

安全・快適系の電子部品用途は、パワーウインドーやヘッドランプ光軸調整、電動パワーシート、オートスライドドア、キーレスエントリーなど多岐にわたり、今後もさまざまな機能の標準搭載化と新機能の創出が見込まれている。
センサーでは、車室内の温湿度を検知し車載エアコン制御と連動させることで乗員の快適性向上や燃費コントロールの最適化を図るソリューションなどが提案されている。自動車ガラスの曇り止めデバイス開発も進む。ドアやトランク、ボンネットなどの開閉検知用防水検出スイッチは、冗長性確保のため、2回路の同期切り替えが可能な製品などが開発されている。最近は座席シートにも姿勢制御用センサーなどが内蔵されるようになっている。
パワーウインドー用モーターは、高トルク化や小型・軽量化、ギアボックスの薄型化などが追求されている。快適性向上に寄与する車室内LED照明システムの技術開発も活発。
近年は車室内での幼児やペットの置き去り事故が世界的に社会問題化しているため、車室内監視デバイスとして、ミリ波レーダーや4Dイメージセンサーなどの提案も進められている。カメラではなくレーダーやRFを活用することで、外光の影響を受けない高精度モニタリングやプライバシーへの配慮が図られている。
自動走行レベル3以上の自動運転車では、走行中の運転者の体調を車自身が把握し、自動運転モードと手動モードの切り替えを随時行う必要があるため、これらに対応する生体モニタリングシステム向けセンサー開発にも力が注がれる。