2025.07.25 STマイクロのパワー半導体、「SiC」「GaN」を両輪に加速 EVやデータセンター市場狙う
8インチのSiCウエハー。右が回路を書き込んだもの
スイスの半導体大手STマイクロエレクトロニクスは、パワー半導体向け新材料として実用化が進むSiC(炭化ケイ素)とGaN(窒化ガリウム)を両輪に製品展開を加速している。23日から東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催中のモノづくりエンジニアのための専門展示会「TECHNO-FRONTIER(テクノフロンティア)2025」(主催=日本能率協会)でも、電気自動車(EV)やデータセンターで使用するSiCとGaNの優位性などをアピールした。
同社のSiC製品は、電力制御を行う半導体素子「パワーMOSFET」として展開。大電流を扱える強みを生かし、EVを中心に用途の開拓に力を入れている。
ウエハーを内製している同社は、すでに直径6インチ(約150ミリメートル)ウエハーを量産化している。26年には、業界で最大の8インチ(約200ミリ)ウエハーの量産を始める予定。結晶成長時の精度の向上により導電時の抵抗を減らし、電力効率を高める方向で技術開発に取り組んでいる。
パワー・ディスクリート製品グループ部長の芳尾桂氏は「最新世代では技術が成熟しつつある」と話す。信頼性の高い製品を安定して量産し、積極的に市場に打ち出したい考えだ。
GaN製品はスイッチング性能を生かして、データセンター向けトランジスタとして展開する。異なる帯域の2種の半導体を使った構造である「GaN HEMT」を基本とし、高速スイッチングによる小型・高密度化で電力効率を向上させる。
STマイクロは3月末、中国GaN半導体大手のイノサイエンスと共同開発と製造に関する契約を締結したと発表しており、これを弾みに製品展開を強化したい考えだ。 STマイクロのシステムソリューションラボでマネージャーを務める柄澤伸也氏は「1~2年後には製品が出そろう」と戦略を明かす。両社は互いの製造拠点を活用し合う契約も結んでおり、中国市場の深耕にも意欲を示している。