2025.08.06 田中貴金属が創業140周年プレスカンファレンス 200年企業に向け従業員一丸

カンファレンスの様子

140年の歩みや超長期的プランを説明する田中貴金属グループの田中社長140年の歩みや超長期的プランを説明する田中貴金属グループの田中社長

産業事業について説明する田中貴金属工業の多田副社長産業事業について説明する田中貴金属工業の多田副社長

 田中貴金属(東京都中央区)は7月に創業140周年を迎えたことを記念し、7月31日に東京都中央区のKABUTO ONEを会場に「140周年プレスカンファレンス」を開催した。

 同社のスタートは、1885年(明治18年)に東京・日本橋茅場町で開業した両替商の田中商店だ。祖業である両替商から産業事業への多角化を推進し、1989年に白金の工業製品の国産化に成功。以降、近代日本の工業化とともに、貴金属の工業利用をけん引してきた。

 現在の田中貴金属グループは、貴金属地金や各種産業用貴金属製品の製造・販売・回収などを行う田中貴金属工業と、宝飾製品のリテール事業などを行う田中貴金属リテイリングなどで構成され、貴金属地金をはじめ、宝飾製品、半導体プロセス用部材、医療用部材など、多彩な貴金属製品を手掛けている。国内外での地金調達から自社工場での加工・製造、販売、さらに貴金属リサイクルまで、貴金属にまつわるあらゆる業務をグループ体制で包括的にサポートする。

 従業員数はグローバルで5591人(国内2991人、国外2600人)。24年12月期の売上高は8469億2100万円、事業分野別の利益比率は産業事業が約70%、リテール事業が約30%となっている。

 プレスカンファレンスで、田中貴金属グループの田中浩一朗社長は「多くの方々の支援により、140周年の節目を迎えることができ、うれしく思っている」とあいさつ。140年の歩みと現在の事業およびグループ全体の今後の戦略などを説明した。

 田中浩一朗社長は今後の重点戦略について、「産業事業では循環型社会の実現への貢献を目指している。リテール事業では、お客さまから信頼される体制強化に努める。この二つの事業を戦略的に推進していくことに加え、創業200年を見据えた超長期的な戦略も推進する」と述べ、創業200年となる2085年を目指す超長期的戦略として21年にスタートした「TANAKAルネッサンスプラン」を紹介した。

 同プランでは、超未来を構想しながら、貴金属の可能性を追求する「『探索』の経営」と、全ての社員がイノベーションを起こす組織創りの「『深化』の経営」を方針に掲げている。「140年の歴史を礎に、200年企業に向け、従業員が一丸となって未来に向けた『挑戦と革新』をさらに重ねていく」(田中浩一朗社長)。

 次に、田中貴金属リテイリングの田中和和社長が、1930年の山崎商店の事業の継承から始まったリテール事業の歴史や、今後のリテール事業の戦略を報告。貴金属のリテール事業の一体化の一環として、全国の直営店6店舗の名称を11月21日に「田中貴金属」に変更することを明らかにした。

 続いて、田中貴金属工業の多田智之副社長が、産業事業の現状と今後について説明。「田中貴金属は、主要な貴金属8元素全てを取り扱い、30種類を超える多彩な製品ラインアップの提供に加え、金属加工製品や化学品、貴金属リサイクル事業を幅広く展開することで、貴金属の総合メーカーとしての体制を構築している」と語った。

 産業事業の製品別売上高構成(加工費ベース)は、ボンディングワイヤ20%、接点15%、リサイクル15%、ターゲット10%、化合物・触媒10%、白金加工品10%などとなっている。特に、半導体チップとプリント基板の電極を電気的に接続する金属線であるボンディングワイヤはグローバルで高いシェアを持つ。

 同事業では、循環型社会への貢献として、リサイクル事業を今後大きく伸ばしていくとともに、水素社会の実現に向けた製品開発・供給にも力を注ぐ。また、健やかで豊かな社会への貢献のため、半導体プロセスに向けた多様な製品の開発・供給を通じて半導体技術の進化への寄与を目指す。

 貴金属リサイクル事業では、自動車の排ガス触媒や製造工程で発生するプロダクションスクラップから貴金属を回収・精製して再利用するほか、小型家電や通信機器といった「都市鉱山」から貴金属精製も行っている。

 会場には、140年の歴史を紹介するパネルや、取り扱う各種製品が展示されていた。

 同社は7月に社史「貴金属とともに 田中貴金属創業140周年記念」を発刊した。