2025.09.18 都が「AI戦略」策定、業務の生産性向上へ 生成AI基盤の試験運用開始
「生成AIプラットフォーム」の概略図(出所:「東京都AI戦略」)
東京都は、「東京都AI(人工知能)戦略」を策定した。AIの利活用を全庁横断で促し、都民サービスの質向上や業務の生産性向上につなげる。今月には全庁で、安心・安全に生成AIを利用可能な共通基盤「生成AIプラットフォーム」の試験運用を始めており、2026年度の本格稼働を目指す。
◇ ◇
都が今夏に打ち出したAI戦略では、各部門がAIを効果的に導入し利活用できるよう、業務領域を「都民サービス」「都民サービス関連業務」「職員内部業務」という3つに整理した。
さらに、業務領域ごとにAIの各種機能の活用法を5つに分類した上で、AI活用に伴うリスクの高低を色で表現。「比較的リスクが低く積極的に利活用」が青色、「リスクに十分配慮した上で積極的に利活用」が黄色、「今後の技術動向や法制度の整備状況などを注視」が赤色と位置付けた。
例えば、生成AIで1人1人に合わせた最適な行政サービスを提供する取り組みは黄色に該当し、公平性や透明性、安全性などへの留意が求められる。
技術とリスクの両面に目配り
都デジタルサービス局でAI戦略担当課長を務める菊地万紀子氏は「AIの利活用の仕方は、技術の進展とリスクの取り方で変わっていく。こうした状況を踏まえて、都のAI戦略を今後もブラッシュアップしていきたい」と意欲を示した。
体制面では、政策、財務、技術の3部門が連携を図りながらAIの利活用をマネジメントする。その際、各局などのAI利活用推進責任者や各部署とも連携していく。
今年度中には、効果的な利活用事例や留意事項への対応をまとめた「ガイドライン」も策定する予定。今夏には、職員の相談に応じるワンストップ窓口も設けた。
一方、都の政策連携団体「GovTech(ガブテック)東京」は、都デジタルサービス局と連携し、生成AIを活用したアプリケーションを簡単に作成できる生成AIプラットフォームの構築を進めている。
多様化・複雑化する行政課題
都がAI戦略を加速する背景には、今後深刻化する労働力の不足や複雑化・多様化する行政課題がある。65年には都の人口が20年比で約1割減少するという推計が示されており、人的資源に依存することなく行政機能を維持・向上させる対応が急務となっていた。
都は3月、50年代を見据えた都の新たな羅針盤「2050東京戦略」を策定した。
菊地氏は、AIについて「2050東京戦略で目指す都市の実現を加速させ、都政の構造改革の強力な推進力となる中核技術の一つとして位置付けた」と説明。その上で「AIを都政のあらゆる側面で徹底的に活用し、都民サービスの質と業務の生産性の向上を図りたい」と強調した。続けて、「都民や事業者の手取り時間を増やし、都民のQOL(生活の質)を高めたい」とも述べた。