2025.08.31 デジタル庁、生成AIで行政実務を効率化 活用実績を国全体で共有へ
閣議後記者会見に臨む平将明デジタル相 出所:デジタル庁のホームページより
デジタル庁は、行政機関が業務で共通利用できる生成AI(人工知能)のシステム「ガバメントAI」の構築に向けて動き出す。同庁の全職員が生成AIを利用できる環境を整え、7月までの検証で行政事務の効率化と省力化に有効であることを確かめた。蓄積した実績や経験を同庁以外にも広げ、政府や自治体のAI実装を促すことを目指す。
ガバメントAIの整備に向けて同庁は、約1200人の職員が使える生成AIの利用環境「源内(げんない)」を内製開発で整備。現場の業務を支援する幅広いアプリケーションを提供し、現場での利用状況や課題を把握するための検証活動を進めてきた。
源内は、5月から7月までの3か月間で、全職員の8割に相当する約950人が利用。生成AIの利用回数は、延べ6万5000回以上に達した。1人当たりの平均利用回数は70回で、生成AIの継続的な活用が定着したと評価している。アプリ別の利用状況を見ると、最も多いアプリが「チャット(対話型AI)」で、これに「文章生成」や「要約」などが続いた。
法制度調査などの行政実務に特化したAIアプリも用意した。1つが「国会答弁検索AI」。国会で問われることを想定した質問を入力すると、関連する過去の政府答弁を国会議事録の公式データベースから検索し、関連性の高いものから順に表示してくれる。
今夏には、源内の利用に関するアンケートも実施。この中で業務効率化への寄与度について尋ねたところ、回答した110人のうち約8割が「寄与している」と答えた。業務の質向上に生成AIが有効との声も聞かれた。他方、生成AIの利用が極端に二分化する傾向も表面化。一部の職員が積極的に活用する一方で、利用頻度が低い職員の存在も明らかになったという。
こうした結果を踏まえて同庁は、今後も検証を継続し、職員全体の理解促進とより実用的な生成AIツールの開発に注力。そこで積み上げた成果を、同庁以外の行政機関のAI実装に生かしたい考えだ。26年1月以降には、一部の省庁と連携して源内の移植方法について検証する予定。民間事業者の活力も生かし、官民連携によるAIの「エコシステム(生態系)」を形成することも視野に入れているという。
平将明デジタル相は29日の閣議後記者会見で、「人口減少という我が国の喫緊の課題を解決するために有効なデジタル技術として、政府自らが生成AIの積極的な利用を推進していくべきと考えている」とした上で、「今後も率先して安心・安全な生成AIの活用を推進していく」と述べた。
26年度予算要求は過去最大の6100億円超
同庁が同日公表した2026年度予算の概算要求額は、25年度当初予算比で約3割増の6143億7000万円で、過去最大の規模となった。6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に定めるデジタル化施策を推進するとともに、社会のデジタル化で司令塔を担うための体制を強化する。要求額の9割超は情報システムの整備・運用に関する経費が占め、5929億円。人件費を含む同庁の運営経費は、195億円を計上した。
さらにデジタル社会形成の推進で19億円を要求しており、その中に新たな要求項目として「生成AIの利活用にかかる経費」を盛り込んだ。具体的には、生成AIのモデル性能を比較するために必要な「評価用データセット」の整備を推進。各府省庁が効果的で安全に生成AIを活用できるよう横断的に支援する専門組織「先進的AI利活用アドバイザリーボード」の運営などにも取り組む。また、7月時点で同庁の人員体制は、民間人材を含めた合計が1160人で、74人の新規増員を求める。「1500人規模の組織を一つの目安に着実に体制整備を進める」(同庁)方針だ。