2025.09.30 【電波新聞75周年特集】75年 これまでとこれから 家電AV 

ネットワークとつながり、製品・サービス連携、さらには暮らしのトータルサポートまで、新たな価値創出の流れが強まる

家電 時代に合わせ止まらない進化  

 日本の戦後復興、高度成長、安定成長期における消費者の暮らしを支えてきた家電製品。家事の省力化、暮らしの便利・快適に貢献し、時代に合わせ暮らしの質を高めてきた。主要な家電製品では普及率がほぼ100%まで高まっている現在、家電製品の市場は買い替え需要を中心に推移し、新規需要を創出するような主役級の家電の登場は少なくなっている。こうした中でも時代の変化に合わせ、家電製品の進化は止まらない。

 近年は人口減、少子高齢化、共働き世帯や単身・少人数世帯の増加、働き方や暮らし・生き方に至るまでの価値観の多様化、さらには経済格差の拡大、物価高など、高度成長期とは様相が異なり、ライフスタイルは大きく変化している。

 合わせて、地球環境問題の深刻化といった多くの課題が複合化・複雑化し、人々の暮らしや生活に大きな影響を及ぼしている。

 このため、社会課題の解決につながる時代のさまざまな要請に応える形で、家電製品の在り方も大きく変化している。

ネットワーク化の進展

 ライフスタイルの変化やさまざまな社会課題を背景とした家電製品の大きな変化の一つは、製品単体での機能進化と合わせ、ネットワークにつながることによる課題解決型のさまざまな価値創出を図る動きが強まっていることだ。

 インターネットにつながることで、さまざまな暮らしの便利・快適追求から、安心・安全、さらには省エネ・創エネ・蓄エネ連携制御などのソリューションによる価値創出を図る動きが進んでいる。

 業界に先駆けAIoT家電の普及に力を入れてきたシャープでは、既に累計1000万台を超えたAIoT家電をベースに、個別の機器サービスにとどまらず、商品横断で蓄積した顧客データを活用し、消費者の暮らし全体を総合的にサポートするような独自の統合AI(人工知能)サービスの事業化にも取り組む方針だ。

 各社はIoTやAI技術を駆使した製品・サービス連携による価値創出に力が入る。

製品単体も進化

 家電製品単体での商品進化も加速している。生成AI搭載のオーブンレンジも登場し、レシピ提案から最適な調理方法など的確なアドバイスでよりユーザーの使い勝手を高めている。

 また、電気代を含め物価高が続くなど市場を取り巻く環境は依然厳しいものの、環境意識や電気代高騰に伴う節電意識の高まりに応え、省エネ性能の進化も続く。エアコン、冷蔵庫、洗濯機、テレビなど電力消費の多い家電製品においては、今後も継続的に省エネ性能の向上は商品開発の大きな柱となる。

 共働き世帯・単身/少人数世帯の増加や高齢化社会の進展は、時短や家事負担の軽減への関心を深め、タイムパフォーマンス(タイパ)、コストパフォーマンス(コスパ)が重視される。

 パナソニックでは、今秋商戦から世帯構成の変化(単身・少人数世帯の増加)を背景に、冷蔵庫、ドラム洗、食洗機など7製品で本格的に小世帯向け家電の提案を強化している。こうした生活トレンドに沿った商品開発も進んでいく。

AV 市場の声に応えた性能向上が鍵

 暮らしの豊かさ、楽しさを追求するAV機器は、基本性能を進化させながら変化する生活環境や多様化するニーズに応えた製品開発が求められる。AV機器は趣味嗜好(しこう)性が強いものも多いため市場の声に応えた性能向上がカギを握る。

 AV機器の主役でもあるテレビは2011年のアナログ放送停波に伴う特需以降は、買い替えを中心に市場が形成。リビングに置くテレビはこの数年は大画面の高精細4Kテレビが中心になってきている。主要テレビメーカーはパナソニック、ソニー、シャープ、TVS REGZAなどで、最近は中国メーカーの台頭も目立つ。

 現在はミニLEDバックライトを搭載した大画面4Kテレビが主流になりつつあり、今後は大画面化の流れが加速しそうだ。ただテレビの収益性は決して高くなく、国内を中心に製品展開している日系メーカーのテレビ事業は構造改革の対象にもなっている。いかに収益を確保していくかも課題になりそうだ。

 オーディオやヘッドホンは良い音に触れる環境をつくり、新たな需要を発掘していくことが数年来の命題になっている。Hi-Fiオーディオなどの市場は底堅さがある半面、オーディオ愛好家の高齢化も進んでおり、若者層への認知拡大に取り組んでいる。同様にヘッドホン/イヤホンも高音質を求める層と日常使いに終始する層とに二極化しており、高音質な高機能モデルにステップアップしてもらうために、関連各社は試聴機会を増やす施策を打っている。

 デジタルカメラ市場は堅調だ。旅行など外出が増えると写真撮影の機会も増える。スマートフォンでの撮影からよりきれいな写真を求める層も増え、ミラーレス一眼カメラなど専用機を購入する人が増えてきている。スマホとの連動もでき利便性も高まっており今年もデジカメ市場は伸びていくとみられる。

 市販カーエレクトロニクス市場は大きな転換期を迎えている。新型車のディスプレーオーディオ装着が進むとともに、高級車を中心に市販カーナビゲーションシステムを装着できない車種が増えてくことが予想され、従来のナビ中心の製品開発から、クルマでの移動をより安全に楽しくする「エンターテインメント」をキーワードにした製品開発と展開がカギを握っている。

 現在、パイオニア、JVCケンウッド、パナソニック、アルプスアルパインなどが市販ナビなどのカーエレクトロニクス関連製品を開発。各社ともエンタメ機能を拡充するとともに安心安全に配慮した機能を強化している。この先は新型車だけでなく車齢の伸びる既販車をターゲットにした製品開発も進んでいくとみられる。