2025.10.30 衛星は高性能化で「熱く」故障も増加 荏原が冷媒用ポンプ試作へ
荏原製作所はJAXAの排熱システムのためポンプ試作に取り組む。
今後の高性能な人工衛星は、発熱による故障が増加する恐れがある。大手ポンプメーカーの荏原製作所は、対策として冷媒用ポンプの設計と試作に取り組む。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発する排熱システムの部品とする。
JAXAが企画競争公告を行った「2025年度 スターダストプログラム デジタル信号処理に対する高効率排熱システムの研究開発 二相流排熱システム向け性能確認用ポンプの試作(そのア)」の契約相手の一社として選定を受け、試作契約を締結した。
人工衛星が軌道上で柔軟に機器の設定を切り替え、通信用ビームの照射地域や通信容量を変えられるフルデジタル通信システムを搭載するためには、より高性能な電子部品で構成する必要があり、発熱も大きくなる。JAXAは対策として、「二相流排熱システム」を研究開発しており、主要構成部品の一つである冷媒用ポンプは国際競争力強化のために国産で行うことになる。
荏原製作所によれば、ポンプはシステムの心臓部にあたるもの。同社は、ロケットエンジン用電動ターボポンプやスラスター向けポンプなどの開発で培った宇宙向けポンプの技術を生かして貢献できると考え、参加を決めたという。26年3月末までにJAXAへ納入予定だ。
JAXAのシステムは「二相流体ポンプループ」と呼ぶ仕組みを採用する。機械式ポンプを用いて流体を循環させ、物質が例えば液体から気体に変化する際などに必要とする温度変化を伴わない熱、潜熱を利用して排熱する。温度変化を伴う熱、顕熱を利用する方式と比べ流体の量を減らせるため、配管やアキュムレーター(蓄圧器)を小さくできる。例えば、外部条件が変化することで物質が液体から気体に変化する現象「相変化」を利用するため、ラジエーターのフィン効率を高めその面積を小さくできる。また、機械式ポンプは毛細管現象を生かす方式に比べて重力の影響を受けず、地上試験を想定した際の設計上の制約などが少ない。日本のほか、米国や欧州の宇宙機関でも研究開発が進む。








