2025.11.03 名車と暮らしで日本史をたどる 「ジャパンモビリティショー」の特設ガレージに熱視線  

往年の名車が集結したジャパンモビリティショーの「タイムスリップ・ガレージ」=東京都江東区

懐かしい街並みを再現したエリアに展示された名車懐かしい街並みを再現したエリアに展示された名車

モータースポーツで活躍したスバルの「インプレッサ555」(手前)なども存在感を放つモータースポーツで活躍したスバルの「インプレッサ555」(手前)なども存在感を放つ

「クルマ愛」をテーマに語り合う自工会の首脳陣「クルマ愛」をテーマに語り合う自工会の首脳陣

自工会の首脳陣が持ち込んだ新型「プレリュード」(左手前)などの愛車。自工会の首脳陣が持ち込んだ新型「プレリュード」(左手前)などの愛車。

 日本の暮らしを懐かしい名車とともに振り返る――。東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催中の展示会「ジャパンモビリティショー(JMS)2025」(主催・日本自動車工業会)の会場には、そんな体験を味わえる展示エリアが設けられ、来場者の注目を集めている。先人たちが紡いだモビリティーの歴史に思いをはせることができる。

 「豊かで夢のあるモビリティ社会の構築」を目指すJMSの目玉は、未来を見据えたコンセプトカーや新型車だけではない。過去のモビリティー史をたどる「Mobility Culture合同展示~タイムスリップ・ガレージ~」も用意されている。来場者を最初に出迎えてくれるのが、戦後の復興を経て生活の豊かさを手に入れた1970年代以前に焦点を当てたエリア。憧れだった自家用車が一般家庭にも手が届くようになり、日本でマイカーブームが巻き起こった時期だ。当時の街並みを再現した会場では、懐かしい音楽に浸りながら、往年の名車の魅力に触れることができる。

先人たちの技術の挑戦

 一方で日本は、大気汚染やオイルショックといった社会問題にも直面し、環境対策や省エネルギー技術を武器に躍進する時期でもあった。日産自動車の電気自動車のルーツと言われる47年誕生の「たま電気自動車」( 製造元はプリンス自動車工業前身の東京電気自動車)のほか、世界で最も厳しいと言われた米国の排出ガス規制「マスキー法」をクリアしたホンダの量産車「CIVIC CVCC」(73年発売)が存在感も放っていた。

 80~90年代のエリアでは、ポップカルチャーからラグジュアリーまで、当時のブームを振り返ることができる。トヨタ自動車の高級セダン「セルシオ」やSUBARU(スバル)の「レガシィ ツーリングワゴン」のほか、普段使いの相棒でありながら操れば本格的な走りをみせるトヨタのスポーツクーペ「カローラレビン」などが存在感を発揮。「21世紀に間に合いました」という印象的なキャッチコピーとともに登場した世界初の量産ハイブリッド乗用車「初代プリウス」も展示されている。

 90年代は、世界ラリー選手権(WRC)で日本車の快進撃が始まった時期でもある。スバルの「インプレッサ555」(96年のサンレモラリー参戦車両)などの名車にも熱い視線が注がれていた。ライフスタイルが多様化した2000年代のエリアでは、バリエーション豊かな車を紹介。加えて、デジタル化や地球環境に寄り添った車もクローズアップしている。

業界首脳が「クルマ愛」語る

 JMS が開幕した10月30日には、「未来モビリティ会議」の特別セッションを開催。自工会の正副会長7人が登壇し、「クルマ愛」をテーマに熱く語り合った。 

 会場には、思い入れのある登壇者の愛車が集結。自工会の佐藤恒治副会長(トヨタ社長)は、トヨタの「MR2」を展示した。MR2はエンジンを車体の中央部分に配置した国産初の量産ミッドシップ車で、88年生産のMR2をオーナーから譲り受け、整備を経て今夏から運転しているという。佐藤氏は子育てのように愛情を注いでおり、「手がかかればかかるほどいとおしい」と述べた。

 自工会の三部敏宏副会長(ホンダ社長)が持ち込んだのは、9月に発売したホンダの新型「プレリュード」。かつては「デートカー」の代名詞として多くの若者を魅了したスポーツクーペで、約24年ぶりにハイブリッド車として復活を果たした。三部氏は「久しぶりの渾身(こんしん)の一台をつくろうということで、開発の初期から乗っていた。足周りは抜群にいい」と力を込めた。また、鈴木俊宏副会長(スズキ社長)は、79年発売の軽自動車「アルト」などを紹介。「(アルトは)初めて乗った四輪車。ワクワクドキドキの体験をした」と思い出を明かしてくれた。

 ドライバーの負担を減らす自動運転技術の進化など、モビリティー分野の技術革新への期待感が高まる一方、「操る楽しさ」を追求したいというニーズも根強い。三部氏は「自動運転の時代が来ても(自分で操る車は)必ず残ると考えている。運転して楽しいモビリティーはなくなることはない」と力説した。若者のマイカー離れが指摘される中でJMSは、憧れの車に乗って青春時代を過ごした中高年が世代を超えて車の魅力を伝える場にもなりそうだ。一般公開は9日まで。