2025.11.17 パナソニックHD、住宅設備子会社をYKKに譲渡 強みを融合しシナジー最大化へ

握手を交わすYKK APの堀秀充会長(左)とパナソニック ハウジングソリューションズの山田昌司社長=17日、東京都千代田区

YKK APとパナソニック ハウジングソリューションズが描く成長戦略YKK APとパナソニック ハウジングソリューションズが描く成長戦略

 YKK とパナソニックホールディングス(HD)は17日、パナソニックグループの住設機器・建材事業を担うパナソニック ハウジングソリューションズ(PHS)をYKKに譲渡する契約を結んだと発表した。これに伴い、パナソニックHDが保有するPHS株式のうち80%をYKKが設立する中間持株会社が取得。PHSはYKKグループの一員となる。譲渡額は非公開。

 譲渡手続きは2026年3月末に完了し、同年4月に新たな体制で事業を始める予定。27年4月以降には、中間持株会社の下にYKKグループの建材事業を担うYKK APとPHSを並列に入れ、両社のシナジーを最大化できる新体制へ移行していく。両社の強みを融合することで、建築資材・住宅設備業界をけん引するリーディングカンパニーを目指す。

 両社を合わせた事業規模は、海外を含む24年度の売上高実績で1兆411億円。これを、35年度を目標に1兆5000億円に引き上げる目標も掲げた。その間に上積みされる4500億円程度のうち半分は、海外での伸長になる見通しだ。

 PHSはYKKグループの一員となるが、パナソニックHDは引き続きPHS株式の20%を保有し、両社が協働してPHS事業の経営を行う体制とする。パナソニックグループの電材や住設から家電に至る広範な商材の提供も引き続き継続する。

 さらにPHSは、引き続きパナソニックブランドとPHSの社名を使用し、パナソニックHDが保有する技術や知的財産も中長期的に活用していく。

国内新設住宅の減少など環境変化に対応

 背景には、国内の新設住宅着工戸数の減少やリフォーム市場の拡大といった事業環境の変化がある。加えて、温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現やIoT住宅の増加といった潮流が広がる傾向もある。こうした中で両社は、強みを掛け合わせることで、持続的な成長を追求することを狙う。

 YKK APは、窓やドアなどの開口部を中心に住宅からビル、エクステリア建材に至るまで幅広い建築資材を扱い、需要が伸びる樹脂サッシやアルミ建材、カーテンウォールなどで強みを持つ。

 PHSは、国内を中心に幅広い内装建材や水廻り設備などで実績を積むほか、パナソニックグループの住宅設備・建材の製造・販売からエンジニアリングまで広範なソリューションを提供している。

 同日開いた記者会見でYKK APの堀秀充会長(YKK取締役)は、「木質建材ではシェアが低いが、これが強いPHSから商材を手に入れることで、建材関係ではトップシェアになるだろう」と強調。続けて、「IoT住宅やリフォーム需要の取り込みでは、PHSとのシナジーが大いに期待できる」と述べた。

 PHSの山田昌司社長執行役員は、両社が連携することで「豊富な商品群と強靭(きょうじん)な販売力と確かなものづくり力でシナジーを発揮し、ワンストップソリューションを実現できる」と説明。加えて、「オリジナルの優位性ある強い商材を生かし、建築分野の省力化や創エネ、省エネなどにつながるソリューションの提案にも取り組み、新しい価値提案を図っていく」と意欲を示した。

 建築資材・住宅設備市場では今後、総合的な製品・ソリューションを含むサプライチェーン(供給網)全体で競争力の強化が求められ、規模を伴う継続的な投資が必要となる。 

 パナソニックHDとしては、今回の譲渡は経営体質の強化に向けた事業構造改革の一環。同じ業界の競合会社であるものの重複事業が少ないYKK APを、「事業ビジョンを共有できる最適なパートナー」と判断したという。