2025.12.05 パイオニア、CarUX傘下に スマートコックピットでシナジー

両社の技術と知見を生かしグローバルでの新たなスマートコックピットの展開を強化する(ジム・ホン会長〈左〉 と矢原社長=4日、東京都港区)

 パイオニアは12月1日付で、台湾液晶パネルメーカー群創光電(Innolux)子会社で自動車向けスマートコックピット統合システムを展開するシンガポールのCarUXホールディングスの傘下に入った。パイオニアが持つ車載オーディオやナビゲーションシステムで培ってきた技術と知見をCarUXのスマートコックピットに融合。新たなスマートコックピットの構築を目指す。今後、両社が持つ顧客基盤を相互に活用した展開を強化するとともに、双方のR&D(研究開発)や製造拠点を生かしグローバルでの成長を加速させる計画だ。

 CarUXはスマートコックピットの設計、開発、製造を手掛けており、自動車向けOEM(相手先ブランドによる製造)ではTier1サプライヤー(一次請負事業者)として20年以上の実績を持つ。今回のパイオニアのグループ化は、CarUXのスマートコックピットに音響やカーナビで培ったパイオニアのHMI(ヒューマンマシンインターフェース=人と機械との操作技術)などを融合させ、自動車での新たな移動体験を創出する狙いがある。

 4日に東京都内で会見したInnolux会長兼CEO(最高経営責任者)でCarUX会長のJim Hung(ジム・ホン)氏は「車内で過ごす時間がこれからは単なる移動時間以上のものになってくる」とした上で、「パイオニアの技術を融合していくことで、スマートコックピットをさらに再定義できるようになる」と述べた。

 パイオニアは市場環境の変化により経営が悪化し2019年に香港投資ファンドのベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(BPEA)の傘下に入り「パイオニア再生プラン」を掲げ経営再建に取り組んできた。20年1月からは現社長の矢原史朗氏が陣頭指揮を執り、外部からの人材も積極登用しながら構造改革を加速。21年には再生プランを終了し、音響やカーナビなどで使ってきた知見を最大限生かしていくために事業の選択と集中を進め、「モノ(プロダクト)×コト(ソリューションサービス)」で社会課題を解決する企業を目指そうとしている。

 BPEAは22年にスウェーデン投資会社EQTと経営統合しており、今回、EQTがCarUXへのパイオニア株の売却を決めた。パイオニアは19年以降、業績も改善し6期連続で営業黒字を達成するなど、成長に向けて着実に歩み出していた。今回のグループ化について矢原社長は「双方の持つ技術や製品、拠点などは全て補完できるもので、CarUXのディスプレーと、パイオニアのHMIを垂直統合できる意味では、業界ではとてもユニークなポジションを築けるとみている」と見解を示した。

 今回のグループ化により、顧客基盤、製品ポートフォリオ、R&D・製造拠点の3分野でシナジー(相乗効果)を出していく。顧客基盤は、CarUXは米国、欧州OEMで、パイオニアはグローバルでの市販製品ブランドと日本のOEMで強みがある。

 拠点では、パイオニアは日本、タイ、ベトナムをはじめとするアジア全域に加え、欧米に研究開発と製造ネットワークを持つ。インドやドイツにもR&Dセンターを開設している。一方のCarUXはアジア全域に製造拠点があり、欧州とアジアに四つのR&Dセンターを持つ。

 今後、双方の拠点網を生かしたクロスセル(相互販売)をしていくとともに、IC調達などを一体で行うことでコスト競争力も高めていく。矢原社長は「CarUXの海外網を生かしたパイオニアブランド製品などの展開にも期待できる」と話している。