2025.12.20 フォードのEV戦略転換、合弁解消 韓国電池企業へ波及へ 

フォードへの供給計画が中止になったLGESのポーランド工場

SKオンの単独運営に移管されたフォードとの合弁のテネシー工場SKオンの単独運営に移管されたフォードとの合弁のテネシー工場

 米フォード・モーターが電気自動車(EV)事業の見直し策を発表した動きのあおりを受け、韓国電池メーカーに波紋が広がっている。SKグループのエネルギー事業SKオンは、モトローラとの合弁を解消し、LGエナジーソリューション(LGES)は受注していた車載電池9兆6000億ウォン(約1兆108億円)分をキャンセルするとの通告をモトローラから受けた。

 フォードは15日、EV事業関連の撤退や見直しで、2027年度までに195億ドルの費用を計上すると発表している。フォードの事業戦略の改定では、ピックアップトラック「F-150 Lighting」の全電動型から撤退し、代わりに航続距離を延ばしたEREV(Extended Range EV)型のピックアップトラックの投入やエネルギー蓄積システム(ESS)事業へ注力する方針をしている。

 トランプ政権のEV購入者に対する助成金の見直しなど、EV優遇政策にブレーキがかかり、EV市場の先行きを不安視されている。こうした中、フォードも対策を迫られていた。

 こうした事業見直しの影響は、韓国の電池企業に及んできた。LGESは17日、昨年10月24日に締結したフォードとの受注契約で、キャンセルの通告があったことを明らかにした。LGESによると、フォードは26年から30年までの間にLGESに34GWhを供給。 さらに、27年から32年までの6年間で、75GWhの容量を供給するという内容だ。金額的には、ドル換算で55億ドルの規模と想定。フォード向けの電池は、LGESのポーランド南西部Wroclaw(ヴロッワフ)にある自社工場で生産される予定だった。LGESのポーランド工場では、フォードの欧州向けも生産されている。アナリストは、欧州で販売する商用車「E-Transit」などには影響が出ないと、予測している。

 フォードの事業見直しの発表の直前には、同社とSKオンとの合弁体制の見直しが明らかになった。SKオンとフォードとの間には電池生産の対等出資会社「Blue Oval 」があり、テネシーとケンタッキーの両州にそれぞれ合弁の工場がある。合弁解消後は、テネシー州の工場をSKオンが、ケンタッキー州の工場をフォードが引受け、独立運営の体制とする。関係当局の承認手続きが完了すると、26年第1四半期末に新体制へ移行する。フォードのEV戦略見直しは、他社にも影響を及ぼしそうだ。