2020.07.30 【電子部品技術総合特集】TDK松岡大執行役員
松岡 執行役員
全固体電池を本格的に事業化
TDKは、グローバルでの新製品開発を加速している。日本、米国、欧州、中国の4極における研究開発体制に、イスラエルの開発拠点を配置し、連携が強まり、新製品開発の成果に期待が集まる。
松岡大執行役員は、「グローバル4極体制となって約3年経過した。コミュニケーションがしっかり取れ重要な研究テーマをほぼスケジュール通りに行ってきた。フェース・ツー・フェースだけでなく、Webなどのデジタルツールも有効に使って開発を行ってきたため、新型コロナウイルスの対策下でも大きな支障なく研究を進められている」と4極プラスワンでの研究体制の進捗を語る。
新型コロナの感染拡大で世界の経済活動が鈍っている。そんな中でも新たなビジネスチャンスを得るために、新製品開発に絶え間なく前進する。その一例として、グループの米インベンセンスのモーションセンサーで培ったソフトウエアをコロナ対策に生かす開発を行っている。地磁気を利用し位置を特定でき、「誰と誰がどのタイミングで接触しているのかといった情報の採取が可能で、製造業では工場内でのコロナ対策に使える可能性がある」(松岡執行役員)と現在様々なトライアルを行っている。
重点育成製品について、全固体電池の本格的な事業化への取り組みを掲げている。この全固体電池は、17年末に開発を発表。オールセラミックで4.5×3.2ミリメートルサイズ。定格電圧1.4Vで容量100μAhを実現。松岡執行役員は「当社は他社に先駆けて量産段階に突入し、先行している。小さい電池を要求する用途からスタートしているが、引き続き容量拡大は重要なテーマだと考えている」と技術進化への取り組みを継続する。
さらに松岡執行役員は、第5世代高速通信規格(5G)関連の高周波技術への取り組みを活発化。「当社のコア技術の一つであるセラミックの材料技術が生かされるチャンスが到来した。セラミックフィルタ、アンテナ、アイソレータなどなど、10ギガbpsの先にある高周波帯域への対応も視野に入れて、開発に取り組んでいる」。
同社は、成長戦略としてM&Aで欧米企業を中心に傘下にし、センサー事業の育成に注力。サンノゼにあるコーポレートベンチャーキャピタルであるTDKベンチャーが成長戦略に基づき各方面での出資を実施。出資先のCTO(最高技術責任者)などとも連携し、開発に取り組んでいる。松岡執行役員は「TDKベンチャーの存在は非常に重要」としている。