2020.07.30 【電子部品技術総合特集】5G用部品の動向各社、関連市場で業界標準めざす

 電子部品メーカー各社は、第5世代高速通信規格5Gに照準を合わせた技術開発を活発化させている。コロナ禍によるデジタルシフトは、5Gの普及拡大ペースを加速させることが予想されている。各社は、5Gスマートフォンや5G対応基地局などに使用される電子部品開発を進めるとともに、5G通信が創出する様々なソリューションサービス、さらに将来の車載5Gなどに照準を合わせた先行開発を推進し、5G関連ビジネスの拡大を目指す。

 5G通信は、20年以降の超高度情報社会に向けた次世代通信方式。超高速大容量、低遅延、多数同時接続などを特徴とし、現行LTEの約1000倍の大容量化などが想定されている。IoT/M2Mの普及を視野に、さらなる多様なサービスへの対応も想定されている。

 5Gの実用化は、先行していた海外市場に加え、日本でも今年3月後半以降、主要通信キャリア各社が商用サービスを順次スタートしている。今年20年は「5G元年」と位置付けられ、今後、基地局整備の進捗や主要スマホ各社の5G対応モデルの拡充などにより、5G市場が本格化していく見込み。

 既存の4Gと比較すると、5Gではより高い周波数で超高速通信を行うため、小型基地局を数多く設置する形でのエリアカバーが必須とされ、基地局の設置台数が大幅に増加する。5Gは同時多接続や低遅延などの特徴を持ち、IoTの普及促進への寄与も期待されている。このため、かつての3Gから4Gへの移行時とは異なり、5Gの普及は様々な産業分野や社会全体に大きな変革をもたらすものとして、周辺産業も含めた広範囲な市場への波及効果が期待されている。

 5Gは「Society5.0」の基幹インフラとして社会に定着するとともに、CPS/IoTとの組み合わせによって新たな価値創造につながることが期待されている。

 こうした動きに対応し、電子部品各社は5Gに照準を合わせ、高周波/ミリ波対応や高速大容量伝送、高耐熱などのニーズに対応する新製品開発を加速させている。自社のコア技術を活用し、高性能なデバイスの開発・提案を進めることで、5G関連市場での業界標準の獲得を目指している。

 JEITA(電子情報技術産業協会)が昨年末に公表した「5Gの世界需要見通し」によると、5G市場の世界需要額は今後年平均63.7%増で成長し、30年には168兆3000億円と、18年比で約300倍に拡大する見通しとなっている。

 5G技術は、将来の高度自動運転の実現にも必須の技術とされる。また、今後の需要創出が期待されるローカル5Gは、機密情報を高セキュリティで担保できることから、これまで無線化が進んでいなかった工場や農場、建設現場やイベント会場、病院などでの導入拡大が見込まれている。