2020.09.30 【電波新聞70周年特集】ロボット多様な産業で導入へ、国内で連携組織相次ぎ発足
ロボット市場は、労働力人口の減少、中国・アジアの新興国で見られる賃金上昇、品質・生産性の向上などを背景に拡大を続けてきた。
14年以降、前年比2桁増の伸びで推移。産業用ロボットの世界販売台数は13年の17万8000台から17年の38万1000台へと4年間で2倍に増加した。
世界の産業用ロボットの6割弱が日本メーカー製で、日本は世界一のロボット生産国として市場をリードしている。
ロボット市場の成長トレンドは今後も続くと見られるが、19年は米中貿易摩擦の長期化で設備投資が抑えられ、自動車、スマートフォン市場の伸びが鈍化。
半導体市場も大きく減速し、産業用ロボット市場は前年を割り込んだ。20年も新型コロナ感染症拡大の影響で世界経済が大きく後退。
設備投資も、自動車をはじめとして抑制され、世界の産業用ロボット市場の成長鈍化が懸念されている。
しかし、これまでロボット市場をけん引してきた環境に変わりはない。
むしろ、働き方改革や新型コロナ感染症対策である3密回避への対応として、製造業はもちろん、サービス業でも省人化、自動化のためのロボット化が喫緊の課題になっている。
産業用ロボットは自動車産業、電気・エレクトロニクス産業を中心に、金属・機械、プラスチック・化学製品などで導入されてきた。
さらには産業用ロボットに必要な安全柵がいらず、人と協働できる協働ロボットの登場で対象業種は一気に拡大。
食品・医薬品・化粧品の三品産業や、中堅・地方企業の各種製造業でロボット化できる工程・作業から積極的に導入していく動きがある。
富士経済の調査でも製造業向けロボット(組み立て・搬送系、溶接・塗装系、アクチュエータ系、クリーン搬送系)の世界市場は25年に19年比2.2倍となる2兆2727億円まで拡大。
業務・サービスロボットの世界市場も、25年には19年比2.3倍の4兆6569億円になると予測する。
AGVとAMRの自動搬送車の世界市場を業界では20年1650億円と予想。新型コロナ感染拡大防止策や働き方改革が普及を後押しし、これまでの年率30%の成長が今後も続くと見る。
産業ロボットはIoT、AI(人工知能)、5G・6Gの次世代通信を駆使して収集するビッグデータの分析によるスマートファクトリーでの位置付けを追求。導入しやすく、扱いやすい協働ロボットは事業の強化が進む。
日本では8月、産業用ロボット大手6社が産学連携により産業用ロボットの基礎技術研究を行う「技術研究組合 産業用ロボット次世代基礎技術研究機構(ROBOCIP、ロボシップ)」を設立。
ロボット導入に重要な役割を担うシステムインテグレータ(SIヤー)も18年7月に「FA・ロボットシステムインテグレータ協会」を設立した。
今年6月にはロボットメーカー7社ほかが「未来ロボティクスエンジニア育成協議会(CHERSI、チェルシー)」を設立。高等専門学校や工業高校などと連携して人材育成を図り、世界をリードする日本のロボット産業を支えていく。