2020.11.25 モビリティ革命は「大きな変化、チャンス」新時代のエネルギーを考えるシンポ
エネルギーや環境問題を取り巻く話題について議論する「新時代のエネルギーを考えるシンポジウム」が25日、開かれた。100年に1度の変革期とされる自動車などモビリティの技術に焦点を当て、将来のエネルギーや環境問題とのかかわりなどについて、専門家らによるパネルディスカッションが行われた。
シンポジウムは、石油元売り最大手のENEOS(エネオス)や日本エネルギー経済研究所などでつくる実行委員会が主催。1997年から始まり25回目で、今回は、「どうなる?モビリティ革命~CASE・MaaSは未来をどう変えるのか~」をテーマにした。例年1000人近くが集まるが、初めてオンラインで開催した。
自動車産業には、「CASE」(つながる車、自動運転、シェアリング、電動化)の変革の広がりに加え、次世代移動サービス「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」の波も押し寄せている。冒頭、エネオスの大田勝幸社長があいさつし、こうした技術革新に触れて「エネルギー供給や街づくりの在り方にも大きな変化をもたらす。自動車関連だけでなく、通信、小売、エネルギー事業者にとって、大きなビジネスチャンスになっている」と語った。
パネルディスカッションでは、NHKの関口博之解説委員がコーディネータを務め、パネリストとして企業や行政などから5人が参加した。
CASEの実例として紹介されたのが、米国アリゾナ州。IT大手のグーグルの自動運転開発部門が分社化して誕生したウェイモが18年から自動運転タクシーの運用を始めている。
パネリストの新井紀子・国立情報学研究所社会共有知研究センター長は、自動運転に導入されるAIについて「統計的にたくさんのデータを集めて、その中から確率的に当てていく技術にとどまっている」と指摘。「東京で動かせた車が、真冬の札幌でも動かせるわけではない。人の行動パターンや文化、リスクの取り方などみな、違うためだ」とし、「技術をどこで使うべきかを見極めることが重要だ」と強調した。
また、自動車の電動化が進めば、将来のエネルギーの在り方とも直結する。欧州や中国を中心に普及が進む電気自動車(EV)は、蓄電池としてエネルギーシステムのプレイヤの一つともみなされている。
取り上げられたのが、世界28カ国で利用されるフィンランドのスタートアップ企業、ヴィルタ社。EV充電器をネットワーク化する最先端のプラットフォーム技術で、利用者はスマートフォンなどでEVから充電や売電でき、決済も可能な仕組みを提供している。
竹内純子・国際環境経済研究所理事は「電動車が大量に入り、うまくコントロールすると、電気をつくる時間帯が読めない再生可能エネルギーの導入を進めるのに役立つ」と話した。