2021.07.09 【家電流通総合特集】21後半戦 わが社の家電流通戦略パナソニック コンシューマーマーケティング

宮地 社長宮地 社長

 パナソニックコンシューマーマーケティング(PCMC)は2021年度、デジタル技術を活用してユーザーの利便性を向上するとともに、パナソニックショップ(PS)などが持つ顧客とのリアル接点を有機的につなぐ戦略を重視していく。宮地晋治社長は「デジタルで効率を目指しつつも、リアル接点の重要性は変わらない。販売店と一緒になって推進していく」と述べ、デジタル技術をPSと顧客を結ぶ「ラストワンマイル」に生かしていく方向を示した。

デジタル技術で効率化

 同社は今年度、大型4Kや有機ELテレビへの買い替えが進んでいる半面、コロナ禍で積極的な販促策が難しい。巣ごもりでエアコン需要が底上げされるなど家電の販売は堅調だが、例えばエアコンではボリュームゾーンのシェア争いが厳しさを増すなど、市場環境は変化してきている。変化する需要に対応するとともに、IoT家電の普及を後押しするための施策が重要になってきた。

 そうした中で、宮地社長は「より一層お客さまの暮らしにフォーカスしていく」と話す。それにより、ユーザーとの強固なエンゲージメント(関わり)の構築を目指していく考えだ。

〝クラパナ〟活用の取り組み推進

 その一環として5月末に、スマートフォンアプリケーション「CLUB Panasonic(クラブ パナソニック)」(クラパナ)をリニューアル。同社が展開するIoT家電を家庭内のWi-Fiと接続しやすくした。最初にWi-Fiルーターを設定すれば、同社製IoT家電を「わずか2~3ステップでつなげられる」(宮地社長)。

 IoT家電の利便性向上や、それを生かした新サービスの創出などにとって鍵を握るのは、顧客の使用データを収集することだ。例えば修理依頼を受けたエアコンの故障箇所が事前に分かれば、修理時間や必要な部品もある程度想定できる。その入り口として、クラパナのリニューアルを通し、接続の敷居を下げ、販売店にもIoT家電を積極提案してもらうことを狙っている。

 宮地社長は「家電をネットワークにつなげることで、ソフトウエアのアップデートを行える。今ある家電商品の新しい使い方を提案できるようになり、また次もパナソニックの商品を選んでいただける」と意気込む。

 特にPSは、シニアの客層に対し、IoT家電を接続して普及させるためのラストワンマイル的存在だ。クラパナの登録から使い方まで、顧客からの信頼が厚い地域店だからこそ任せられる面もある。

 宮地社長は「これまでの地域店施策(ショップバリュー政策)を推進しながら、クラパナを生かした取り組みを進めてもらえるよう一緒になってやっていく」と期待を込める。

 地域店はリアルの接点に強みがある。足元では新型コロナの収束が見通せないことから、全国的に夏合展は見送り、個展を軸に催事を組み立てた。その際、これまでのような訪問によるDMの手渡しだけでなく、無料通話アプリ「LINE」などのSNS、ホームページ(HP)での情報発信を組み合わせたアプローチを進めている。この一年でSNSを活用したり、HPを充実させたりするPSは格段に増えた。

 宮地社長は「コロナ禍となって2年目の夏を迎え、個展の施策も昨年より強化されている」と自信を見せる。

 同社は、ニューノーマル(新しい日常)に合わせた地域店活動として、今後もデジタル技術を生かしていく方針だ。これは量販店ルートでも同様で、IoT家電の購入者をクラパナの会員にするための販促なども打っていきたい考えだ。カスタマーサービスなどもクラパナからアクセスできるようにするほか、家電の使用状況に合わせたメッセージの発信など、現在も配信しているメルマガの開封率を高める仕組みも検討していく。

各エリアごとにコンテンツ発信
リアルとデジタル両面で攻める

 クラパナを今後の軸に据えつつ、地域店、量販店それぞれでPCMCが目指すのは、地域の特性を生かしたエリアマーケティングの強化だ。

 宮地社長は「PS、量販店ルートを問わず各エリアに合わせたコンテンツを発信していく。エリアごとの販促や商品提案をできるようにしていく」と狙いを話す。

 例えば、IoT家電の接続率が高まることで、エリア内における家電の使われ方がログデータを基に見えてくる。一定量が集まれば、傾向もつかめるようになり、エリアに合わせた施策を打ちやすくなる。

 宮地社長は「IoT家電の接続率が高まれば、エリアに合わせたお役立ち情報を発信しやすくなる」と説明する。

 エリアマーケティングの実践は、顧客との接点が強い地域店にとってもプラスになる。「お客さまごとに適切な情報発信をできるようになる。お客さまとの接点を中心にした販売店のプラットフォームの強化にもつながる」と強調する。

 PCMCは、アフターコロナも視野に入れた営業活動や社内業務のデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)を今後も加速していく。「アフターコロナでもリアルとオンラインのハイブリッドな状況が続く」(宮地社長)として、テレワークでも販売店の要望に応えられる体制の整備を進める。IoT家電が普及することで業務効率の向上にもつなげられると期待する。

 宮地社長は「リアルとデジタルの両面から攻めていく」とし、ニューノーマルに合わせた販売店施策を展開する。