2021.10.27 【JPCA Show特集】電子回路基板市場動向自動車や5Gなど需要押し上げ

 電子回路基板(プリント配線板、モジュール基板)は、自動車、情報通信端末、産業機器などの成長分野を中心に、新たな技術を創出しながら生産規模を拡大している。特にCASEをキーワードに高機能化が進む自動車、第5世代移動通信規格5Gの本格化、IoT市場の広がりなどが電子回路基板の需要を押し上げている。電子回路基板メーカー各社は、今後も次世代ニーズに向けた技術開発や投資戦略の推進により、継続的な成長を目指す。

21年7%増見通し

 日本電子回路工業会(JPCA)の生産見通しによると、2021年の日系企業の電子回路基板の世界生産額は、前年比7.3%増の1兆4072億円が見込まれ、4年ぶりに前年比プラスに転じる見通し。内訳は、国内生産が同8.4%増の7044億円、海外生産が同6.1%増の7028億円となっている。

 21年の国内の電子回路基板の品種別では、リジッド系モジュール基板や高多層のビルドアッププリント配線板などでの高い伸びを予測しており、主に通信インフラ、コンピューターおよび情報端末、医療機器などのアプリケーションが需要拡大をけん引する見通し。

 20年の日系企業の電子回路基板生産額は、新型コロナウイルス感染拡大の影響などにより、前年比4.2%減の1兆3118億9000万円と減少した。その中でも、国内生産額は、リジッド系モジュール基板、高多層のビルドアッププリント配線板などが高い伸びを示し、前年比2.3%増の6498億円とプラスを確保した。一方、海外生産額は、同9.9%減の6620億9000万円と19年に続き、大幅なマイナスとなっている。

 21年の電子回路基板市場は、前年の新型コロナ感染拡大に伴う経済停滞からの回復により、堅調な需要推移が予想されている。

 国内生産については、自動車のxEV化やADAS/自動運転技術の高度化といった電装化率の上昇が、車載用基板の伸びを支えることが期待されている。さらに、5Gサービスの本格化に伴う基地局などインフラ設備投資の増大や、5G化が促進するIoT関連の新規需要創出などが、電子回路基板需要を押し上げていくことが期待されている。

国内年率6.9%増

 また、JPCAによる将来予測では、国内生産の22年の年平均伸び率が6.9%増、23年が6.2%増。海外生産は、22年の平均伸び率が6.6%、23年の平均伸び率が6.0%となっている。国内生産と海外生産を合わせた全体では、22年の平均伸び率が6.8%、23年の年平均伸び率が6.1%を予測しており、23年には1兆5662億円に達する見通し。

 電子回路基板の技術開発では、自動車向けは、xEV化の進展によりモーターを駆動するインバーター、DC-DCコンバーター、オンボードチャージャー、バッテリーマネジメントシステム(BMS)といった高放熱、大電流を要求する基板需要が拡大しており、メタル基板、厚銅基板、銅インレイ基板、スルーホール厚付け銅めっきなどの技術が、要求に応じて使い分けられる。

 スマートフォン、モジュール、半導体パッケージ用のプリント配線板は、高密度化技術が一段と進展している。スマホ向けのエニーレイヤー基板は、コア層を持つ一般的なビルドアップ多層板から、L(ライン)/S(スペース)は50マイクロメートル/50マイクロメートル以下の微細化技術を適用したエニーレイヤー基板へと高度化している。さらに、5G対応端末でのパターンルールは30マイクロメートル/30マイクロメートル程度へと進展していく見通し。

 さらにモジュール基板では、多層板の内層にICや抵抗器、コンデンサーなどの部品を埋め込み、基板表面にも部品を実装することで基板面積を小型化できる部品内蔵基板技術なども注目されている。