2022.01.14 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<70>北欧に学ぶローカル5G導入障壁の突破方法⑥

 東京では年末に昨シーズンより17日も早く「初雪」を観測したかと思えば、年を越して大雪だ。筆者の家の周りでも数センチメートルほど雪が積もったが、2~3日で解けて、今は元の景色に戻ってしまっている。豪雪地帯の人たちには申し訳ないが、この程度の雪でも寒さが身に染みる。

 気象庁によると、現在も稼働中の同庁観測点で観測史上最大の積雪5メートル66センチを記録したのは、2013年、湯治場で有名な青森県の酸ケ湯だという。これだけの豪雪では、外に出るのも気が引けてしまう。

 これが、緯度が20度も北に位置し最低気温がマイナス20度、平均マイナス10度の北欧フィンランドの首都ヘルシンキは、さらに深い積雪かと思いきや積もったとしてもせいぜい1メートル程度なのだそうだ。

 さて、前回フィンランドのサウナは極寒に耐える人々の心を解放し、気軽に誰とでも交流できるコミュニティーの場となり、商談や会議など、日々新たなビジネス機会を提供していると述べた。

 ここで改めて「日本にはこのようなコミュニティーの場はあるのだろうか?」ということを問うてみたい。

5G導入の障壁

 というのは、ノキアとノキアベル研究所の「5Gビジネス・レディネス」リポートでは、日本における第5世代移動通信規格5G導入の障壁として、5GがIoTや人工知能(AI)によるビジネスプロセス変革にとって重要であるという「教育」と「意識改革」、導入を促進する「エコシステム」などの欠如が挙げられており、これらの突破には共通の課題を解決する5Gのユースケース(利用事例)をはじめ、オープンな「情報共有」と「コラボレーション」が必要だと述べられているからだ。

 これは「日本にはこのような機会を提供する場があるのか?」という彼らの問いにも聞こえる。

 日本のビジネスの現場でサウナのようなコミュニティーを強いて挙げるとすれば、オープンセミナーなど業界団体などが主催するイベント後に設定される「ビジネス交流会」だろう。ここでは、普段話ができないどころか、出会うこともない競合他社の社員やユーザー企業の経営者、関連する業界団体の理事など、飲食を共にしながら歓談でき、課題の共有や新たな情報を収集し人脈を構築できる。こうした機会は貴重で大きな魅力でもある。

 ところが、コロナ禍によってその機会を逸しているのが現状。たとえコロナが一時的に収束したにせよ、リラックスして会話できるような交流機会は、当分の間は無理かもしれない。新型コロナ変異株による感染拡大が始まっている今となってはなおさらだ。

デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)によるビジネス変革

オンラインで交流

 そこで思いつくのがオンラインコミュニティーだろう。例えば「デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)によるビジネス変革」を共通テーマとすれば、ユーザー企業をはじめ、IoTやAI、5Gの関係者が集まりやすいはずだ。

 同業他社とローカル5G導入に関する障壁の情報を共有しながら貴重なヒントを得たり、補完的な企業と思わぬ協調のチャンスを得たり―。こうした機会をオンラインで作ることが今求められていると感じる。(つづく)

 〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉